ジュエリーや化粧品などのプロダクトを、ライティングや配置の妙により物語性のあるイメージ風景に作り変えるスティルライフ(静物写真)の名手、中川十内。彼が、東京・西麻布と銀座の2つの会場で、写真展を開催している。会場に並んでいるのはスティルライフではなく、意外にもインド・ドゥンムリ村に暮らす家族のポートレイトだ。



2会場で展示。同じ一枚の写真を、銀座の会場ではカラー、

西麻布ではモノクロの印画紙に焼いて展示している



 中川がこの村の家族を撮影したのは、2010年のこと。彼は、インド北部のビハール州で開催された『ウォールアートフェスティバル(日本とインドのアーティストが、インドの学校の壁に絵を描き、表現や学びの楽しさを伝えるチャリティプロジェクト)』に公式写真家として参加。滞在中に、会場エリアのはずれにあるドゥンムリ地区を訪れた。


「村にいると、子どもたちが僕の持っているカメラを不思議そうに見ながら集まってくるんですよ。で、周りのスタッフに聞くと、この村の人々は、アウト・オブ・カーストだったという。つまり、かつてヒンドゥー社会に存在していたカースト制度の最下位に属する人たちで、差別を受けていたんですね。電気も通っておらず、文明の利器はいっさいない。彼らは写真を撮られた経験すらなかったんです。そこで、村の人たちの家族写真を撮らせてほしい、と願い出ました。彼らにとっての初めての写真。何をどう撮るのがいいのか――そう考えたとき、“家族写真”という言葉が浮かびました」


 すぐに白い布とロープを現地で調達し、“青空写真館”を作って29家族のポートレイトを撮影。日本に帰国し、これらの家族写真をプリントして見たとき、中川は驚いた。「経済的には貧しいのだろうけど、みんな身なりは綺麗にしているんですよ。今でもアウト・オブ・カーストの名残のようなものは確かにあるけれど、写真に写っている彼らの姿に、高貴な印象を受けたんです。ほとんどがいつもの格好で、ありのままの彼らを撮ったのだけど」と話す。「彼らは小作人だから、その場所に住みながらも形式的には土地を持っていない。でも、彼らを見ると、しっかりこの土地や自然と共生しているような気がしたんです。太陽とともに起きて、必要な食べ物を得るために仕事をし、一日を終える。雑念がなく、シンプルかつ正直に生きている家族の姿は、とても美しく見えました」



ポートレイトはそれぞれの家族に届けられた。その際に、家族のプロフィールを確認し

展覧会ではキャプションがわりに名前と年齢を記載している

PHOTOGRAPHS: © JUNAI NAKAGAWA



「われわれは、文明や進化という名のもとに豊かな生活を手に入れているとされているけど、なぜか疲れてしまったり、感性が鈍ってしまったりしている。僕が写真をプリントして驚いたように、みなさんにもこの展覧会で、生きること本来の“輝き”のようなものを取り戻す一枚を見つけてもらえたら、嬉しいですね」





風に吹かれて ードゥンムリ村 29の家族の肖像ー


2会場にて開催。作品の販売収益の一部は、ウォールアートプロジェクトの運営費として寄付される。


会場:ギャラリー403

住所:東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4階

会期:〜12月6日(木)

開廊時間:12:00〜19:00

電話: 03(3535)5733


会場:ギャラリー イー・エム西麻布

住所:東京都港区西麻布4-17-10

会期:〜12月16日(土)

開廊時間:12:00〜18:00

休廊日:日・月曜

電話: 03(3407)5075

公式サイト






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