《絹の夢 #50 併用絣銘仙 桐生》2011年、アーツ前橋蔵

©Ishiuchi Miyako

 今、もっとも個展の開催が待ち望まれている写真家、石内都の展覧会が横浜美術館で始まった。写真界のノーベル賞と言われるハッセルブラッド国際写真賞を2014年にアジアの女性として初めて受賞した石内は、広島の被爆者の遺品を被写体とした<ひろしま>や、近年ではアーティストのフリーダ・カーロの遺品を撮影した<Frida by Ishiuchi>シリーズで知られている。


「石内 都 肌理(きめ)と写真」と題したこの展覧会では、石内の写真家としての本格的なデビューとなった個展「絶唱、横須賀ストーリー」(1977年)以前に横浜を撮影した最初期のシリーズから最新作まで、40年にわたる創作活動における代表作約240点を展示。石内が育った土地であり、写真家としての人生を送ってきた「横浜」をはじめ、「絹」、「無垢」、「遺されたもの」と、その作品を貫く4つのキーワードに分け展示している。



《yokohama 互楽荘 #2 1986-87年

© Ishiuchi Miyako



《Mother's  #35》2002年

© Ishiuchi Miyako



《Frida by Ishiuchi #36》2012年

© Ishiuchi Miyako



 デビュー前のものも含めた最初期の作品や、写真家としての評価を決定づけた、母の遺品を撮影したシリーズ<Mother’s>など、展覧会の見どころは数あるが、圧巻なのは石内も「想像以上にうまく展示できた」と述べた「絹」の部屋だろう。銀色に塗られた四面の壁に、まるで絹がかかっているかのように絹織物を写した作品が飾られている。石内の生まれ故郷である群馬県桐生の絹織物「銘仙」を撮影したシリーズ、「背守り」と呼ばれる子どもたちのための着物を撮ったシリーズに加え、新作となるファッションデザイナーのリック・オウエンスの亡き父の着物、徳島の阿波人形浄瑠璃の衣装など、かつて誰かが身にまとった色鮮やかな絹たちは、もうそこにはいない人たちの気配を感じさせる。



© YOKOHAMA MUSEUM OF ART



《ひろしま  #106 Donor:Hashimoto, H.》2016年 

© Ishiuchi Miyako



 展覧会のタイトルともなった「肌理(=GRAIN)」という言葉について、石内は「作品制作のなかで一番好きな作業は暗室でのプリント作業」とし、「”GRAIN“はプリントの粒子を表す言葉でもあります。(展覧会の内容は)この言葉に全部現れている」と述べている。肌の肌理、布の肌理、写真の肌理……。肌理は表面であり、そこには時間の流れが堆積している。石内の写真にもまた、その表面を通して過ぎ去った時間が映し出されているのだ。




石内 都 肌理と写真


会場:横浜美術館

住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1

会期:2017年12月9日(土)~2018年3月4日(日)

開館時間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)

※2018年3月1日(木)は16:00まで、3月3日(土)は20:30まで

休館日:木曜(2018年3月1日は開館)、年末年始(2017年12月28日~2018年1月4日)

入場料:一般¥1,500、大学・高校生¥900 ほか

電話:045(221)0300

公式サイト






  • 1