あなたの身の回りに、ダウン症の人はいるだろうか? そして、あなたはその人の家族を知っているだろうか?


 この5月8日(月)から14日(日)までの1週間、東京メトロ表参道駅コンコースで、フォトグラファー宮本直孝による写真展「母の日 –I’m a mother of a child with down syndrome」が開催されている。被写体は、ダウン症のある子どもと母親、21組だ。


 子どもと母親のポートレイトがひと組になったモノクロームの写真は、それぞれ縦0.9×横2メートル。縦1.8×横3.4メートルもの大きいものもある。そこに焼き付けられた親子の表情は、見る者の心を強く揺さぶらずにはおかない。



「"子ども"といっても小さな子から大人までいろいろです。なかなかじっとしていられない人や、なかにはまったくこちらを見てくれない人もいる。でも、ピアニストとして活動している方に、ふと思いついてクラシックのピアノ曲をかけてみたら表情がぎゅっと引き締まった。絵を描くことを仕事にしている人には実際に絵を描いてもらったり。多い人で900カットぐらい、あれこれ試行錯誤しながら、時間をかけて撮りました。ダウン症というと特徴的な顔のイメージがあるけれど、実際にはみんなすごく個性的だし、みんなお母さんとよく似ているでしょう」


 21組を撮影した宮本はこう振り返る。長年、女性ファッション誌を中心に多くのモデルを撮影してきたトップ・フォトグラファーのひとりだが、2007年以降、表参道・スパイラルビルのギャラリーなど"オープンスペース"で、たびたび写真展を開催。雑誌の表紙を飾ったモデルたちの写真展『COVER GIRLS』で得た収益を国連のWFP(世界食糧計画)に全額寄付したのを皮切りに、2012年にはロンドン・パラリンピック選手、2016年には日本に住む難民と、そのテーマはしだいにメッセージ性の強いものへと変わってきた。



「自分が望んでというより、社会的なことのほうが面白いじゃん、って、自然とこうなってきた感じです。基本的にはオープンスペースで無料で見られるから、毎回、資金は僕の持ち出し。だけど、若いカメラマンに、ちゃんと仕事もして、こういう活動もしてるという見本になればいいなと思っています」

 今企画は、日本に5万~6万人いるといわれるダウン症候群への理解をうながし、ダウン症の人々とその家族が健やかに暮らせる社会づくりをめざすNPO法人アクセプションズとのコラボレーションによって実現した。



「最初は、とにかく彼らの真剣な顔を撮りたいと思ってたんです。笑顔を撮るのは簡単だけど、笑顔はすべてを隠しちゃうから。でも、どうしてもやわらかい表情になってしまうお母さんがいて、『やっと授かった子だから私にはつらさは特になくて。うれしさのほうがずっと大きいんです』って。いろいろな厳しい経験をしてきて、でもそれを乗り越えた女性たちは確実に魅力的でした。そういうお母さんたちを撮影しながら、僕自身、撮りたいと思うものが少しずつ広がっていきました」


 何組めかの撮影時、カメラの前に立ったある母親に「どうしたらいいですか」と尋ねられた宮本は、「この十数年の思いを、全部この一枚に込めてください」と頼んだ。そうして何枚も何枚も撮り続け、決まったカットをモニターで見た母親は「私、いい顔してる。いい人生を歩んでこれてるんだ…」と涙を流したという。



 並べられた2枚の写真の間には、言葉に尽くせない時間と思いが積み重なり、互いに強い引力で結ばれているように見える。写真展のタイトル「母の日」は、この母親たちが主役であることを意味している、と宮本は言う。21人の母親たちの顔を、表参道で見つめてみてほしい。




フォトグラファー 宮本直孝 × アクセプションズ

「母の日 – I’m a mother of a child with down syndrome」


場所:東京メトロ 表参道駅コンコース(ADウォール・B1出口付近)

会期:5月8日(月)~14日(日)

※オープンスペースのため観覧無料



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