19世紀と20世紀の大半において、化粧品は私たちの身体だけでなく魂まで清めるものとされてきた。私たちはなぜ、ボトルの中に再び心のよりどころを求めるようになったのだろう?

BY ALICE GREGORY, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO, TRANSLATED BY JUNKO KANDA

画像: PHOTOGRAPH BY FLOTO + WARNER

PHOTOGRAPH BY FLOTO + WARNER
 

 1838年、英国生まれの元医学生で、渡米後に催眠術師となったロバート・コルヤーは、ニューヨークを評して「インチキ療法が満ちあふれ、厚顔無恥な者なら誰でも医者になれる場所。無学な二足歩行の動物であっても、信心家ぶった弁舌と偽善の持ち主であれば福音を説く牧師になれる場所」と述べた。動物磁気と骨相学(人の頭蓋骨のサイズと形は持ち主の知能と性格に直結すると説く学説)という怪しげな学問をライフワークとしたコルヤーから言われるのはいささか腑に落ちないが、第二次大覚醒(1800~1830年代に米国で起こった大規模なプロテスタント信仰リバイバル運動)直後の社会に対する診断としては妥当なものだろう。

 そして、この言葉は多くの点で現代にもあてはまる。夫が使っているフケ対策の薬用シャンプーと病的な緑色の固形石鹸が美観を損ねているシャワーコーナーから目をそらし、ブルックリンのわが家の古ぼけたバスルームを眺めれば、19世紀の薬局さながらだ。薬品みたいなにおいがする――というのも、シンクの上にアンバーオイル(樹脂の化石から抽出したオイルで、鎮静作用やエネルギーのバランスをとる働きがあるといわれる)の小瓶がいくつも並んでいるせいだろう。以前はすっきりとしていた窓辺は、銃眼のあいた城壁みたいにデコボコの影を投げかけている。窓の下枠の端から端まで、ラベルに途方もなく抽象的な効能(私はこれを半ば信じ、半ば疑っているのだが)を書き連ねた容器が林立しているからだ。

 何種類ものエッセンシャルオイルと癒やし効果をもつ“濃厚な”レイキ(霊気)が詰まった“オーラ・スプレー”の隣には、「貴重な成分であるバイタリティの劣化を防ぐために、バイオレットカラーのガラスを採用しました」とラベルに記されたボディオイルのボトルが並んでいる。今にもゴミ箱に転がり落ちそうな容器に入っているのは、未加工の食物だけを摂る完全菜食主義者用のオーガニックバスソルト。これは、電話でおしゃべりしたりパソコンのキーボードを叩いたりすること(E.M.F.の略号で知られる電磁場への暴露)で蓄積する毒素を私の体から取り除いてくれるのだそうだ。

 私はときどき、バスタブに浸かりながら「ヘリテージ・ストア」のウェブサイトを拾い読みするのだが、このブランドは何十年も前から、エドガー・ケイシー(1877~1945年)の“リーディング”に従って調合された、バランスを整え癒やしをもたらすチンキ液を販売している。ケイシーは、中学校卒業という学歴ながら、霊能力をもつといわれた南部のキリスト教神秘家だ。“人の心を操るペテン師へのガードは固い”と自負する私だが、頰にぱたぱたとつけるローションや脚に塗るグリースとなると、見境なく手にとってしまう。ナサニエル・ホーソーンの小説に出てくる受動的でエセ科学に弱い若い娘のように、すぐ影響を受けてしまうのだ。

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