ロング・アイランド島の傾斜地に立つこの家は、

ジョン・ベイテルによって造園設計された。

「屋上の牧草地」のおかげで、家の中は夏は涼しく、冬は暖かい

 庭の真価は、雨の日にどんなふうに見えるかでわかる。青い空の下、蝶々が飛んでいればどんな景色も素晴らしく見えるものだ。しかし、はたして夏の嵐のときにはどうだろう?


 先日、たたきつけるような雨の中、私は車でロング・アイランド島の東部にある6エーカーの庭に向かった。まず最初に目に飛び込んできたのは、水浸しになった灌木が横倒しになって通れなくなった2本の砂利道だ。そこに停められた車の中にぼんやりと見えるのは、じっと座って雨をしのいでいる造園設計家、ジョン・ベイテルの姿だ。手入れの行き届いたイボタノキの生垣や、栄養たっぷりに育てられたバラの花壇、咲き乱れるアジサイといった、それとわかる造園されたらしい気配はどこにも見えない。私には、ここがペコニック湾の端にある「ハンプトン・ベイズ・ガーデン」ではなく、人里離れた自然保護林の中の曲がりくねった道のようにしか思えなかった。



ロング・アイランド島の南海岸に位置するベルポートで育ったベイテルは、

この島の自然のままの海岸線に愛着をもっている。

「ガーデニングは、ファッションととても似ている」と彼は言う。

「流行はうつろいやすい。最近、私たちは原点に回帰しているんだ。

より本来の自然なあり方に近づけるようにね」



 私は車の窓を下ろして声をかけた。「こっちにくる? それともそちらのクルマに乗りましょうか?」

「この嵐はもうすぐ過ぎ去るよ」と言いながら、ベイテルは私が乗ってきたレンタカーの助手席に飛び乗ってきた。私にはこの天気がすぐに回復するとは思えなかったが、彼の自信たっぷりなその様子に感服して、しばらく待つことにした。しかし、ここから数マイル離れたサウスショアにあるベルポートというのどかな村で育ったベイテルは、このあたりのことを熟知しているようだ。今朝早く、彼はファイヤー・アイランドから荒れた海を船で渡ってきたのだが、また船であちらに帰れるのは“かなり確実”だと言う。


 私たちが車を停めていたのは、霧がかった長い砂利道の端のようだった。その道のつきあたりに、半分隠れるように平屋根の家が見えた。屋上には何やら生えているようだ。

「屋上の牧草地ですよ」とベイテルが教えてくれた。36年にわたって庭園の設計をしてきた彼にとって、どうやらこの庭はお気に入りらしい。ひとつには、この低層住宅が、周辺の土地とひと続きになっているかのように建てられているからだ。それは、ほかに替えのきかない唯一の正解でもあった。ニューヨークの建築事務所 Maposの建築家、カレブ・マルベナはこの住宅をデザインするにあたって、敷地内にもともとあったコテージを目立たないように高台の奥に移動させた。そうすることで、住宅に続く車道から見ると、視線が手前の建物を通り越し、自然とその奥に広がる地平線へと向かうようにしたのだ。