マレー・モスによるソーホーの伝説的なショップ&ギャラリー「Moss」は、デザイン界に今も消しがたい痕跡を残している。カラフルなヘラ・ヨンゲリウスのセラミック、マーティン・バスの椅子、18世紀の陶器 ――思いもよらないディスプレイで、一見ちぐはぐなアイテムをいっぱいに詰め込んだこの店は、1994年から2012年のあいだ、彼とパートナーであるフランクリン・ゲッチェルによって営まれた。ほかに類を見ないアバンギャルドの宝庫であったその店は、業界の新たな先駆けとなった。


 近年、モスとゲッチェルはニューヨークを離れ、コネチカットの小さな町に引っ越した。1929年に建てられたコロニアル様式の住宅に移り住んだふたりは、そこでデザインと販売のコンサルティング会社を経営している。4月10日には、ショップ&ギャラリー「Moss」が与えた影響を振り返った本をリッゾーリ社から出版した。これを記念して、T magazineはモスにポラロイドカメラを送り、彼の自宅を彩るあまたのオブジェのいくつかを撮影してくれるよう依頼した。


「この写真はすべて3月1日の朝に撮影した」。以下に紹介する写真について、モスは言う。毎朝、午前4時ごろに起きて、紅茶を淹れた後、オブジェたちを点検しては並び替える。クリスタルのガラスとか、ニンフェンブルクの陶製の鳥など―--それらオブジェへの愛情と習慣がそうさせるのだと彼は言う。「店があった頃から、いつもやっていたことなんだ。いまは自宅だし、ずっと小さなスケールになったけど、それを今も続けているというわけさ」




「毎朝、僕が最初に開ける食器棚に入っている、ビクトリア朝時代のティーポット」





「節だらけのアルダー材を張ったリビングの長い壁に作りつけられた、本を置くための小さな飾り棚のひとつ。アフリカのお面と、写真家のウィージーが撮ったシャルル・ド・ゴールの写真、それにライザミネリの写真やヘラ・ヨンゲリウスとサイモン・ハッサンがつくった花瓶を組み合わせて戦わせているんだ」





「エットレ・ソットサスがデザインした1969年製オリベッティ・バレンタインのタイプライター。これは、うちの小さなデザインライブラリーの壁にとり付けてあるんだ