『魔法にかけられて』への出演以降、アダムスは次々と興味深い役をこなし、評価を揺るぎないものにした。当然ながら、何度もアカデミー賞にノミネートされた。演劇クラスで出会った俳優でアーティストのダレン・ル・ギャロと、長い交際期間を経て2015年に結婚。娘の名前アヴィアーナは、軍人である父の赴任地で、アダムスが生まれたイタリアのアヴィアーノからとった(アダムスは7人兄弟の中で、両親が離婚するまでモルモン教徒として育った)。アヴィアーナが生まれてから、アダムスは自分と仕事との関係を改めて考え直すようになった。「撮影現場を離れたら、何もかも忘れる方法を学ばなければならなかった。難しいし、いつもそうできるとは限らないけれど、今のところはなんとかうまくいっているわ」。長時間の撮影やロケで家を空ければ家族につらい思いをさせることになる。だが、夫が快く同行してくれるので助かっているという。「わかったことがあるの。デトロイトのアパートメントでも、ハリウッドの一軒家でも、ホテルの客室でも、家族が一緒にいられれば幸せだってこと。心地いいの。だから私は家族との時間を守りたい。何としてもね」


 犯罪ドラマ『Sharp Objects』のような企画の場合、仕事とプライベートを切り離すのは難しいはずだ。アダムスが演じるのは、凄惨な事件を追う新聞記者。初めて製作総指揮も務めた。「制作に関われることにワクワクしたわ。遠慮なく意見が言えるようになるなんて。自分がそういう役割を果たす立場になったことがうれしかった。『ちょっと待って。私の意見を聞いて!』なんてね」。アダムスはこの仕事を楽しんだようだが、本音ではどこまで制作に関わりたいのだろうか。「私は同時にいくつもの仕事をこなせるタイプなの」とアダムス。「緊張を強いられる経験よ。毎日、一日じゅう陰鬱な役を演じながら、制作の仕事もこなさなければならない。おまけに、ほかのスタッフのマネジメントもある。大変だけど、やりがいがあるわ」


 複数の仕事をこなす大変さは撮影現場にも及ぶ。ある日の撮影はノーカット、ワンテイクの難しいものだった。泣きながらバスルームの床を這いずって、偽物の吐しゃ物を口に入れ、それを吐き出さなければならなかった。そんな演技の最中、ある男性スタッフが小道具の場所をささやくようにアダムスに教え続けたので、ついにアダムスは「わかったわよ。わかったってば!」と怒鳴ってしまった。あとで、役になりきっていたからと説明して謝ったという。


「彼はただ私の役に立とうとしただけなのに」とアダムスは言った。それは私がアダムスに期待していたとおりの反応だったが、しかし、私は彼女を誤解していたようだ。私はアダムスがいかに精神的な闇の部分に入り込んでしまったかを説明したのだと思ったのだが、重要なのは、彼女はスタッフに怒鳴ったことを間違っているとは思っていなかったということだ。「現場であんな口調になってしまったことは反省している。彼を傷つけたことは悪いと思っているけれど、怒鳴ったのには理由があるし、私はそれを理解しているわ」



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パコ ラバンヌ

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 アダムスは自分の力で生きてきた女性だ。それはわれわれが女性に求める生き方でもある。とはいえ、自分自身やほかの女性のために、政治宣言のように声高に意思表示しようとする女性ばかりではないこと、またそうしなければならない状況もおかしいということを、われわれは忘れがちだ。ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントが2014年にハッキングされた事件は、男女格差の問題を浮き彫りにする格好の事例となった。ハッキングによって暴露された気まずい醜悪な情報の中で、『アメリカン・ハッスル』に出演したアダムスとジェニファー・ローレンスのギャラが男性共演者たちより低かったことが明らかになった。男女の賃金格差について自身の思いを公表したローレンスに対して、称賛の声があがった一方で、非難の声もあった。アダムスは、ローレンスの行動を誇りに思うけれど、ギャラの格差があったとしても詳細は語りたくないと何度も強調した。「この件で、自分自身の経験については話したくないの。私は誰の助けも借りずに自分の力で戦っているし、それについて何の不満もないから」。


彼女が認めているように、「有名人が世間から共感を得られることはあまりない」のは確かだ。一方で、ソニーのハッキング事件のおかげで、アダムスは男女格差の問題に関心をもつようになった。その数年前から、彼女はいくつかの時代もの映画の準備のために、ベティ・フリーダンの『新しい女性の創造』といったフェミニズム運動に関する本を読んでいた(「私は大学に行っていないし、女性学の勉強もしたことがなかったから、フェミニズムについて知識がなかったの」)。ハッキング事件のあと、ふたたび腰を据えてこの方面について勉強するようになったアダムスは、女性重役の給料がどのくらいか知るために今まで以上に時間を費やし、CEOや教師、社会学、文化的条件づけに関する本を読みあさった。


「不平等について語ることは重要よ」と前置きしたうえで、アダムスは言う。「でも私自身に関していえば、自分が勉強して、もし若い女性たちのメンターになることができれば、自分自身がすごくパワーを得られる気がする。そのほうがずっと意義があるわ。共演した若い女優たちには、自分の電話番号を教えているの。現場ではこう言ってあげたい。『そんなことしなくていいのよ。Noと言ってもいいんだから』」。


これは控えめな意思表示に思えるが、映画界が長い間、女優たちの従順さにつけ込んで利益を得てきたことを考えれば、それほど控えめとは言えないだろう。女優たちは搾取されるか失業するかしか選択肢がなかったために、不本意でも黙って従うほかなかったのだ。だからこそ、Noと言える女性は自立する力をもつことができるし、自分の意見を主張する女性が増えることが多くの女性を鼓舞するのだ。アダムスは、言いたいときに、どうしたいかをはっきりと言う。そして自分の思ったとおりにYesかNoかを伝える。アダムスは最近、小さな娘に向かって「ボスみたいに威張らないで」と言うかわりに、「あなたは誰のボスなの?」と尋ねるという。「娘は『あたしよ』と答える。私は言うの。『そのとおり。だからあなたは、どんな人になるかを自分で選ぶことができるのよ』」




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