『残されし大地』は、 シアター・イメージフォーラムにて3月11日(土)よりロードショー。フォーラム福島、シネマテークたかさきほか全国順次公開。
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 原発事故後の福島県・富岡町などに住む人々を記録したドキュメンタリー映画、『残されし大地』が3月11日から公開された。

 監督はベルギー人のジル・ローラン。サウンドエンジニアとして映画に関わってきた彼の初監督作品である。2016年3月22日、彼は本作の完成間際にブリュッセルで起きた連続自爆テロに巻き込まれ死亡。遺志を継いだ同僚らがこれを完成させた。

 彼が、妻の母国、日本に移り住んだのは2013年のことだ。自然を愛し、環境問題にも関心をもっていた彼は、ひとりの男性に興味をもつ。避難指示解除準備区域の 福島・富岡町に残り、置き去りにされた犬や猫、近くの園で飼われていたダチョウの世話をしている松村直登さんだ。ローランは、インタビューを録音したものをベルギーのラジオ局に送る予定だった。しかし、実際に会いに行ってみて、松村さんのたたずまいに心動かされ、映像で記録することを決意する。 富岡町には、みずみずしい葉を茂らせる豊かな森があり、自然と調和して生きる人々 との楽園のような光景があった。松村さんが歩くと、犬や猫がうれしそうについてまわり、ダチョウは顔を寄せてくる。友人の半谷夫妻は畑を作り、夫婦仲良く大きなナスを収穫する。地域外に避難している佐藤夫妻は、いつか帰る日に備えて家の手入れに戻り、その庭には、命の再生の象徴、いちじくが実る。本作は先立ってベルギーで公開されたが、現地のある評論家はこの光景を「ノアの方舟」とたとえた。行ったこともない場所なのに、なぜか言い知れぬ望郷の念にかられる。しかし、カメラは生活の場での除染作業の様子や、佐藤夫妻が携帯している放射能測定器を映し出しており、目に見えず、匂いもしない放射能への不安が、事故後に失われてしまったものをわれわれに思い出させる。