早朝から礼拝に向かう人々で活気づくオールドデリーの市中。

菊之助さんの額にはヒンドゥー教を信仰する者の証「ティラカ」が印されている



 「登場人物や場面設定を、どうやって歌舞伎の役柄や演目のパターンに落とし込むかを考えて創っていきました。両家の敵対関係は源氏と平氏のようですし、クンティとカルナが母子と気づきながら名乗らずに別れたり、五人の王子が勢揃いしたりするのも、歌舞伎ではおなじみの構図。『マハーバーラタ』を読めば読むほど、紀元前にインドでできた物語が各地に広がって、歌舞伎など日本の芸能にもつながったように思えるんですよね」


 新作の題材を探し求めていたら、奇しくもルーツを遡るような展開に。広くアジアの芸能と歌舞伎とのつながりを考えるうえでも、貴重な第一歩になりそうだ。演出は、10年以上前から自身の劇団SPACで『マハーバーラタ』を手がけ、世界有数の国際芸術祭アヴィニョン・フェスティバルで上演して絶賛された宮城聰。脚本は、古典をわかりやすく現代化する手腕に定評ある青木豪の書き下ろしと、現代演劇界の才能が顔を揃えた。


ガンジス河上流のリシケシで、カルナの金色の鎧に身を包んだ菊之助さん



「『NINAGAWA 十二夜』のときは、実際の創作過程は父(七代目尾上菊五郎)に任せていたので、今回もアドバイスをもらおうと思ったら『すべてお前に任せる』と言われてしまい、やはりもう、父に頼る時期ではないのだと自覚しました。脚本づくりでは一語一語確認を行い、(歌舞伎にかかわるのが初めての)宮城さんと現場の間をスムーズに運ぶつなぎ役につとめましたが、まだまだ力不足を実感しております。お客様に納得していただける舞台をつくらねばと思うと、責任の重さがぜんぜん違いますね」


 新作を積極的に手がけている同世代の市川染五郎、市川猿之助、市川海老蔵らを「すごいなあ」とまぶしそうに讃えるけれど、スター性、実力、行動力ともに拮抗しているし、迦楼奈(カルナ)の純粋さと一途さ、そしてはかなげな美しさは、菊之助さん以外には考えられない。
「僕は迦楼奈ほど純粋じゃないですよ」
 と微笑む横顔が、すでに愁いを含んだ迦楼奈に見えてくるのだった。




新作歌舞伎『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』


会場:歌舞伎座

住所:東京都中央区銀座4-12-15

日時:10月1日(日)~25日(水)

   昼の部 11:00~、夜の部 16:30~

料金:1等席¥18,000、2等席¥14,000、

     3階A席¥6,000、3階B席¥4,000、1階桟敷席¥20,000

問い合わせ先:0570-000-489(チケットホン松竹 ナビダイヤル)

公式サイト