映画で世界を変えられるとは思わない。それでも、映画芸術というメディアを通して観客に議論を持ちかけたい――。そう語る映画監督は多い。

 オサマ・ビンラディンを追う女性CIA捜査官を主人公にした『ゼロ・ダーク・サーティ』で、女性で唯一アカデミー賞監督賞を受賞したキャサリン・ビグローもそのひとり。イラク戦争従軍兵のPTSDを扱った『ハート・ロッカー』など、社会的なテーマをサスペンスの中に浮かび上がらせる力技で鳴らす彼女は、1951年カリフォルニア生まれの美貌の監督。その5年ぶりの新作は、アメリカ史上最大級の暴動を描いた『デトロイト』だ。



1967年のデトロイト暴動は、アフリカ系アメリカ人が集う

ベトナム帰還兵を慰労するパーティへの警察介入から始まった

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 1967年、夏。アフリカ系アメリカ人が多数集う深夜のバーで、警察による横暴な取り締まりが行われた。積年の鬱憤を爆発させた住民が暴徒化し、州警察と軍隊が総動員されたデトロイトの街は戦場と化した。暴動から3日後、若者たちが宿泊するモーテルに、発砲があったとの通報を受けた警察官が乗り込んでくる。しかし実際はおもちゃのピストルを鳴らしただけの、若者のいたずらだった。そうとは知らない警察官たちは8人の若者を監禁し、狙撃者探しに躍起になり……。



事件に巻き込まれる民間警備員を演じるのは、

『スター・ウォーズ』シリーズでおなじみのジョン・ボイエガ

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 ビグロー監督は、やはり白人警官によって18歳のアフリカ系アメリカ人青年が射殺されたミーズーリ州での悲劇に際し、『デトロイト』を撮ろうと決意をしたという。半世紀を経ても、アメリカの差別と暴力は何も変わっていない。オバマ大統領の誕生とともに前進したかに見えたアメリカは、トランプ政権によってカオスへ引き戻されたと嘆く。その失意と憤りを力に変え、緊迫のドラマによって観客を悪夢のただ中に放り込む。事件に巻き込まれる警備員役のジョン・ボイエガ(『スター・ウォーズ』フィン役でおなじみ)や、童顔を武器に、差別に凝り固まった白人警官を体現するウィル・ポールターらから迫真の演技を引き出しながら、恐怖の一夜を追体験させる音と映像の凄味! 女傑監督のしびれるほどの思いの丈が伝わってくる。



観客が容赦なく放り込まれる戦慄の一夜。

嫌悪感を一身に集める警察官ウィル・ポールターの演技がこれまた秀逸!

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『デトロイト』

1月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開中

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