70周年を迎えた今年のカンヌ国際映画祭は、デジタル化による配信問題に揺れた。


 コンペティション部門に、動画配信大手Netflixが出資し、多くの国で劇場上映がなされないポン・ジュノ監督作『オクジャ/okja』とノア・バームバック監督作『マイヤーウィッツ・ストーリー』の2本が選ばれていたからだ。フランスの興行組合の激しい反発により、2作品のコンペからの除外も噂されたが、審査委員長のペドロ・アルモドバル監督は2作の残留を認めつつ、自身は「映画館の大きなスクリーンが観客を夢心地にするために生涯闘う」と宣言した。


 しかし映画界の動向としては、マーケット重視で制約の多い劇場用映画製作に対し、製作と表現の自由、そして潤沢な資金を得られるという理由でNetflixやAmazonなど大手動画配信会社と手を結ぶ映画陣が増えているのも事実だ。スティーヴン・ソダーバーグが2013年早々に劇場映画からの撤退を表明したのをはじめ、マーティン・スコセッシ、デヴィッド・フィンチャー、テリー・ギリアム、スパイク・リー、トッド・ヘインズ等々、人気監督が続々と動画配信映画の製作に参加している。


 俳優としてだけでなく、製作会社プランBエンターテインメントを率いて、今年のアカデミー作品賞受賞作『ムーンライト』をはじめ、芸術性の高い話題作を生み出し、プロデューサーとしても注目を集めるブラッド・ピットもそのひとり。『殺人の追憶』『母なる証明』『グエルム-漢江の怪物—』といった、スリリングな人間ドラマで鬼才の名を欲しいままにする韓国人監督ポン・ジュノの『オクジャ/okja』もそんなプランBとNetflixの共同作品だ。



 ハリウッドスウターにもひけを取らない存在感を発揮した主演のアン・ソヒョン

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 話題の『オクジャ/okja』 はこの6月29日に配信されたが、それに先立ち、監督ポン・ジュノがヒロイン・ミジャ役のアン・ソヒョンとともに来日、記者会見を行った。


「私自身は、映画を大勢一緒にスクリーンで観るのが最も美しい形だと思います。ですが、映画を観る方法には様々な形があってよいとも考えています。テクノロジーの発展によって、ホームシアターを備えた家のスクリーンで見ることも可能になりました。ストリーミングで観ることもひとつのかたちでしょう。60年代にはテレビが登場したことによって、映画は終わったと感じる人もいました。現在、テレビと映画は共存していますし、デジタルストリーミングと映画館も、今後、平和的に共存できると思っています」



6月22日に開かれた記者会見で仲の良さを見せた

ポン・ジュノ監督と主演のアン・ソヒョン

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 製作に関して100%の自由が与えられたという『オクジャ/okja』。冒頭では、韓国の人里離れた山間に暮らす少女ミジャと巨大動物オクジャが10年の間、家族のように暮らしてきたことが語られる。ところが、遺伝子組み替えによってこの巨大動物を生み出した多国籍企業ミランド・コーポレーションの広報マンがやってきたことにより、彼らののどかな暮らしは一変する。そこに過激な動物愛護団体が加わって、韓国の緑豊かな山岳地帯からソウル、そしてニューヨークへと、ミジャの果敢なオクジャ奪還の旅が始まる。



ミランド社の広報マン役で切れた演技を見せるジェイク・ギレンホール

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「本作は、女の子版『未来少年コナン』だと思っています。大自然のなかで生活しているところや、ずっと走っていて誰にも止められないところとか(笑)。しかし宮崎駿作品だけでなく、ジョージ・ミラーの『ベイブ』にも影響を受けていますし、NYのパレードのシーンは押井守監督の『イノセンス』のシーンを再現したいと思って作りました」


 アン・ソヒョンが勇敢なミジャを好演する映画は、オクジャとの愛の物語として涙を誘う。さらに、ポン・ジュノ監督の前作『スノーピアサー』に出演し、本作のプロデューサーにも名を連ねる英国女優ティルダ・スウィントンがミランドの社長を務めるほか、広報マンにジェイク・ギレンホール、愛護団体のリーダーにポール・ダノと、アクの強い人気スターがエッジの効いた演技を披露。カリカチュアやブラック・ユーモアを駆使して、遺伝子組み替えを隠して利益を追求する大企業の野望や欺瞞、動物愛護と食肉という悩ましいアンチテーゼを織り込んで、観る者に人間のエゴを問うスケールの大きな作品に仕上がっている。



ミジャはオクジャを追ってミランド社が本部をおくニューヨークへ

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『オクジャ/okja』

6月29日よりNetflixにて配信中

公式サイト






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