イファット・オーレンは、超一流のイベント・プロデューサー


 ロサンゼルスーー。夕空が次第に青みがかかった白に変わっていく頃、45歳のイベント・プロデューサー、イファット・オーレンは、パーティ会場の最終チェックに集中していた。「まだキャンドルには火を灯さないで。風が静まるまで待ってね」とアシスタントの一人に指示を出し、ゲストの席を急ぎ配置しなおすため、もう一人のアシスタントに席次表を取って来させた。



 あと30分もしないうちに、50名ほどのゲストがハンコック公園近くで開かれるガーデンパーティに到着する。招待客には、ロサンゼルスの人気レストランオーナーであるジョン・シュックと、その妻でTVドラマ『UnREAL』で有名な女優シリ・アップルビー、慈善団体「Baby2Baby」の創設者ノラ・ウェインスタイン、インテリア・デザイナーのモリー・イザクセン、そして女優のナターシャ・グレグソン・ワグナーなどが名を連ねている。このパーティは、オーレンが親友のジュエリーデザイナー、レナ・ワルドと、「アンディ・ルコント・サロン」のオーナーであるリーアン・シトロンと一緒に企画したものだ。シトロンは、チューダー様式の自宅の裏庭を会場に提供してくれた。



 


 パーティというのは、予定通りには進行できないものだとオーレンは考えている。というわけで、会場の灯りが全部点き、バンドの演奏が終わるそのときまで、オーレンは微調整や変更に追われることになる。「彼女は、まるで明日がないみたいに細部にまで気を配るんだ」とジェフリー・カッツェンバーグは言う。彼は、長きにわたりドリームワークス・アニメーションの最高経営責任者を務め、最近、ハリウッドのベンチャー企業WndrCoを立ち上げた人物だ。カッツェンバーグは、2人の子どもたちの結婚式のプランニングをオーレンに依頼した。「何事にも動じないのが彼女の魅力だよ」。取材に対してそうメールで答えてくれたカッツェンバーグは、「あの難しい状況や顧客のことを思えば、彼女の仕事ぶりは偉業というほかないね」と付け加えた。昨年の夏、イタリアのフィレンツェで娘のステラ・カッツェンバーグとデイヴィットの結婚式が行われた際は、ニコール・リッチーらのゲストが座るバンケットテーブルはピンクと紫の花々で飾られ、上空にはたくさんのミニライトが灯された。



 ロサンゼルスを拠点として活動するオーレンは、裕福で著名な人々を顧客にもつパーティ・プランナーの第一人者だ。同世代のほかのプランナーたちとは違って、彼女はメディアに自分を売り込んだりはしない。インスタグラムで多くの“いいね”を獲得することが成功のひとつと考えられている今日でも、オーレンはソーシャルメディアでの宣伝をほとんど行わないし、SNSには飽き飽きしているという。彼女の経営する会社Oren Co.のインスタグラムには4,000ちょっとのフォロワーがいるが、これはほかに比べてかなり少ない数字だ。たとえばキム・カーダシアンとカニエ・ウエストの結婚式を手掛けたシャロン・サックスはフォロワー27,000以上だし、エレン・デジェネレスとポーシャ・デ・ロッシの結婚式を手掛けたミンディ・ワイズのフォロワー数は179,000以上にのぼる。一方オーレンは、目立たずに活動することによって、キャメロン・ディアスやジェニファー・アニストンといった、自分たちの結婚式を書き立てられたくないと考える顧客の信頼を勝ちえているのだ。





 シトロン家の裏庭でのナイトパーティは、仕事として依頼されたものではなく、あくまでも個人的なものだ。オーレンは仕事柄、夜と週末は特に忙しく、めったに友だちと会えない。そのため、バースデイパーティを口実に友だちを集めたのだ。2つの長い木のテーブルの上には、桃色のベゴニアの花、イチジクの枝、そして蜂蜜の香りのキャンドルが置かれ、(もちろん出席者のひとりである)元ファッションデザイナーのグレゴリー・パーキンソンがデザインしたカスタムメイドのテーブルランナーとナプキンもセットされた。



 座席札はない。その代わり、ゲストの名前はテーブルの上に直接コーラル色のチョークで記された。庭の一隅には、切りたての桃や、スライスされたプロシュート、ノルマンディー産のバターをたっぷり添えたバゲットが用意された。反対側のプールの脇には、ハリウッド・ファーマーズ・マーケット専属の“オイスター・ガイ”(牡蠣職人)が氷の入った台の前に立ち、牡蠣をひとつずつ開いて並べている。「私は"ピンタレスト・パーティ"(SNSのピンタレストのように、きれいなものが並べられているだけのパーティ)には行きたくないし、そういうパーティを開きたくもないんです」と、オーレンは肩をすくめて言う。