6作目となる『The Beguiled(原題)』を発表したばかりのソフィアの創造性に迫る

BY AKEMI NAKAMURA

「こんなに混んでるとは思わなかったわ。いつもはお昼にしか来ないから。声をレコーディングするのに大変でしょ。場所を変えましょうか?」。ソフィア・コッポラのインタビューは、NYのウェストヴィレッジにあるカフェで行われることになっていた。白を基調にした、シンプルでしゃれた雰囲気の小さなカフェに約束どおり朝10時に現れた彼女は、開口一番、小さくやわらかい声で、気を遣ってくれた。過去にもインタビューしたことはあるのだが、そのときはホテルに缶詰状態で、分刻みの取材現場だった。この日は、もっとリラックスしていて、彼女のより素の姿が垣間見えているように思えた。あいにくの雨だったのでレインブーツを履いていたが、きゃしゃで、繊細で、一見シャイにも見えるような可愛らしさがある。本人から醸し出されるその雰囲気に、やはりどこか彼女の描く映画の主人公たちに重なるところがあった。私のレコーダーは性能がよいものだったので、インタビューの音声に問題はないだろうと思い、ソフィアの行きつけのカフェでそのままインタビューを行うことにした。

ANDREW DURHAM © CARTIER

 先日行われたカンヌ映画祭では、ソフィアの6作目となる『The Beguiled(原題)』がパルム・ドールをかけたメインのコンペティション部門に選出された。インタビューが行われた時点ではまだ選出作の発表前で、「今、完成直前の最後の追い込みをしているところなの」ということだったが、疲れきった様子はまるでなく、ぴりぴりした様子もない。こんなやさしげな雰囲気で、何百人ものスタッフが働く映画の撮影現場を仕切っていけるのだろうか?とも思うが、ご存じのように彼女は『ヴァージン・スーサイズ』(1999年)で、28歳でデビューして以来、2作目となる『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)では、女性監督として史上わずか3人目のアカデミー賞監督賞にノミネートされている。しかもその作品でオリジナル脚本賞を見事受賞。ハリウッドで長年活躍するある女性監督にインタビューしたとき、「1本目というのは誰も作れる。だけど作り続けるには本当の才能が試される」と言われたが、ソフィアは約20年にわたりすでに6本もの映画を作り続けているのだ。

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