鍛え抜かれたダンサーによるパフォーマンスはDAZZLEの真骨頂。

「病室」で展開するダンスに魅入られながら

ミステリーの深い闇の中へと引きずり込まれる


 舞台となるのは、都内某所の病院跡。さびれた建物に一歩足を踏み入れた瞬間から、観客はDAZZLEワールドにいきなり放り込まれる。


 2000年代ロンドンに端を発する新しい演劇スタイル「イマーシブ・シアター」は、演じる者と観客が同じ空間に立ち、演者を追って歩いたり走ったりしながら舞台の進行を観るという、文字通りの“体験型”演劇だ。NYでロングランを続けるイマーシブの代表作『Sleep no more』は、白いマスクをつけた観客が、出演者たちを追いかけて5階建てのホテルの中を汗だくになって駆け回る。観客は、ときに背景となり、ときに共演者となって、物語の一部に溶け込んでいく。



病院の「受付」で「看護師」から上演中の注意を受ける観客たち。

演者や舞台装置への接触は厳禁だが

「赤いもの」にだけは触れてもよいという――



 今年8月下旬から9月初頭にかけて、日本でこのイマーシブ・シアターに挑戦したのが、ダンスカンパニー「DAZZLE」だ。タイトルは『Touch the Dark』。

 観客はあらかじめ黒い衣装で来場することを求められ、入館と同時に黒いマスクを装着させられる。その瞬間から、自分が単なる「観客」ではなく、舞台空間の一部になったことをいわば強制的に自覚させられるしかけだ。


 1回の公演で観客はわずか55人。グループで来た者もひとりひとり個別のグループに振り分けられ、「看護師」である演者に率いられてそれぞれの物語が始まる。無言の観客に見守られながら、病院内の部屋の中でさまざまなパフォーマンスが繰り広げられるのだが、手を伸ばせば、いや伸ばさなくても触れられる距離で音もなく激しく躍動するダンサーたちに、圧倒される。

 部屋を巡り歩くうちに、徐々にこの病院に秘められた謎が明らかになっていく。さらに、1回の公演で5名だけ購入可能なプレミアム・チケットを持つ者は、途中で別の場所へ導かれ、“特別な”体験をすることになる。