マイケル・ロバーツ(左)とマノロ・ブラニク。

ロンドンにあるマノロ・ブラニク社の本社社屋にて

 それは、46年前のロンドンで始まった。

 イギリス人のファッションライターであり、アーティストでもあるマイケル・ロバーツは、ロンドンにあるフェザーズに向かって歩いていた日のことを思い出す。フェザーズは、ジョアン・バースタインがオーナーを務める先駆的なブティックとして知られていた。「そのとき突然、このクレイジーな男が道の向かい側から道路に飛び出し、僕に向かって走ってきたんだ」


「僕のことさ!」。ラグジュアリーなシューズのデザイナー、マノロ・ブラニクが口をはさんだ。いまもふたりは、マノロが所有するロンドン・メリルボーンのジョージアン様式のタウンハウスに集まっては、一緒にお茶を飲む間柄だ。「僕は知り合いになりたいと思う人がいると、いつもああいう感じだったんだ」


 ブラニクは成功者となり、このインタビューが行われた週には、ふたりの長年の友情の結実として、ロバーツが監督を務めたドキュメンタリー映画『Manolo: The Boy Who Made Shoes for Lizards』(邦題『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』 は2017年12月23日より日本公開)が公開初日を迎えた。この映画は、さまざまな要素をコラジュージュしたような映像作品だ。とても陽気なアーカイブ映像や詩的な短編ドキュメント、ブラニクとの親密な時間を捉えたもの、また米国版『ヴォーグ』の編集長アナ・ウィンター、写真家のデビッド・ベイリー、デザイナーのジョン・ガリアーノといったファッション界の重鎮らの感動的なインタビューも含まれている。

 


マノロ・ブラニクのオフィスにかけられたシューズのデッサン



 この映画で表現されているのは、このふたりの男たちの間に生まれた“バイブレーション”だ。40年以上という長い時間をかけて育まれたこの共鳴が、表立って説明されてはいないが、この映画における大切な要素であることは間違いない。ときにからかい合い、ほめたたえ合い、励まし合うふたりは、まるでハンフリー・ボガートとローレン・バコールのファッション業界版のような掛け合いをみせる。ひとりが話せば、必ずもう片方がコメントを加える。ふたりと同じ部屋にいさえすれば、そうした掛け合いを必ず目にすることができるだろう。各駅停車の旅のように次から次へと、彼らふたりの関係とその歴史を聞くことになるのだ。