2016年からマルニのクリエイティブ・ディレクターを務めるフランチェスコ・リッソ。その美意識を形づくるものたちを自身のコメントとともに紹介

BY LINDSAY TALBOT, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

 マルニのクリエイティブ・ディレクター、フランチェスコ・リッソ。現在35歳だが、その幼少期はフェリーニの映画さながらだ。サルデーニャ島の近くで生まれ、4歳まで両親と帆船で地中海を回遊して過ごした。その後、ジェノヴァの16世紀に建てられた豪奢な邸宅に住む。そこには3人の祖父母もいて、国外からの華やかなゲストがしょっちゅう訪れた。

「家族には実に多彩な顔ぶれが揃っていました」。16歳でフィレンツェのポリモーダにてファッションを学ぶ。安定を求めての “エスケープ”のはずだった。その後、NYのファッション工科大学とロンドンのセントラル・セント・マーチンズへ。「くらくらするような毎日で、常に自分の安全地帯の圏外にいました。おかげで私は大胆でオープンマインドになりました」

画像: 「ヒュー・フィンドルター撮影のポートレート(2016)」 PHOTOGRAPH BY HUGH FINDLETAR, COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「ヒュー・フィンドルター撮影のポートレート(2016)」
PHOTOGRAPH BY HUGH FINDLETAR, COURTESY OF FRANCESCO RISSO

 彼は2008年から8年間、プラダのウィメンズ・デザインとスペシャルプロジェクト部門で活躍した。2016年、マルニを1994年に立ち上げたコンスエロ・カスティリオーニに代わり、同ブランドの舵取りを任された。インパクトのあるフラワープリントや上品だがどこか違和感のあるシルエットといった、このミラノ発のブランドらしさと名声を守りつつも、彼はそこに自身の美意識を加えることも忘れていない。

その美意識は多様で、ディズニー・アニメから18世紀のタータンチェック柄ハンティングジャケットまで、あらゆるものに内包されている。「私を突き動かしているのは、“retrovolution”(革命的回帰)と私が名付けたコンセプトです。伝統について今まで学んだことを総動員して、それを超えていくという意味です」

画像1: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「父が、私に数の数え方を教えているところだと思います。どこかコルシカ島の近くですね」

画像2: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「私の最初のテディベアで名前はニンナ。ニンナのセーターとそっくりなものをネパールで作ってもらいました」

画像: ISABELLE WENZEL, "TABLE 3," 2010

ISABELLE WENZEL, "TABLE 3," 2010

「イザベラ・ウェンツェルの写真《テーブル3》(2010)。この写真のもつ脱構築への誘いと物事を刷新する力が大好きです。これを見ていると、私も自分の心をさらけ出そうと思えるのです」

画像: © FROM THE BOOK ‘‘LIBUSE NIKLOVA’’ BY TEREZA BRUTHANSOVA, PUBLISHED BY ARBOR VITAE SOCIETAS IN 2010. PHOTOGRAPH BY STUDIO TOAST

© FROM THE BOOK ‘‘LIBUSE NIKLOVA’’ BY TEREZA BRUTHANSOVA, PUBLISHED BY ARBOR VITAE SOCIETAS IN 2010.
PHOTOGRAPH BY STUDIO TOAST

「15歳の頃からずっと、60年代ヴィンテージのミリタリーブーツを愛用。毎日、これかコンバースのスニーカーのどちらかを履いています」

画像3: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「ラテックスのトップスは2003年にイギリスで購入。ロンドンではアンダーグラウンドなパーティやナイトクラブに行くときいつもこれを着ていました」

画像4: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「17世紀イタリア製の、幸運を呼ぶチャーム。コーラルとシルバー製で手には悪魔の頭3つと鍵2つ。運命の扉を開けるという意味が込められています」

画像5: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「70年代のチェコで活躍したデザイナー、リブシェ・ニクロヴァの作ったプラスティック人形やビニールトイを集めています。小さな彫刻のようだと思う」

画像6: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「プラダで働いていたときロマン・ポランスキー監督とのコラボレーションで彼と仕事をしました。どうしても彼のサインが欲しかった私は、彼が食べ終わったばかりの紙皿にサインをお願いしました。まだホイップクリームが少し残っているでしょう?」

画像: COURTESY OF MARNI

COURTESY OF MARNI

「マルニの私のオフィス。椅子は50年代のスウェーデン製。ランプはディモーレ・スタジオの制作によるもの。レザーの犬のオブジェはヴィンテージで名前はぺぺ」

画像: PHOTOGRAPH BY GUY MARINEAU

PHOTOGRAPH BY GUY MARINEAU

「マルニ1998〜’99年秋冬コレクションには、とても感銘を受けました。このブランドについて私が特に愛する部分がすべて入っている。遊び心に満ち、のびのびとしているところです」

画像: “MARILYN AS MAO,”1967, © PHILIPPE HALSMAN / MAGNUM PHOTOS

“MARILYN AS MAO,”1967, © PHILIPPE HALSMAN / MAGNUM PHOTOS

「フィリップ・ハルスマンが1967年に撮影した『マリリン・アズ・マオ』が大好きです。私は中国風の4ポケットのスーツを20着持っています。60年代の生地を用いてタイで作り、ずっと着続けています」

画像: “ROLE MODELS” BY JOHN WATERS, COURTESY OF FARRAR, STRAUS AND GIROUX AND FRANCESCO RISSO

“ROLE MODELS” BY JOHN WATERS,
COURTESY OF FARRAR, STRAUS AND GIROUX AND FRANCESCO RISSO

「映画監督ジョン・ウォーターズの『Role Models』。このタイトルがすべてを表現しています! 彼は私のミューズのひとり。不条理な事柄について書いた彼の文章を気に入っています。彼と親交の深いコム デ ギャルソンの川久保玲にまつわる章は非常に刺激的ですね」

画像7: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「シチリアのストロンボリ島で休暇を過ごしたときにアーティストのフランク・ナヴィンが作ってくれたネックレス。いつも身につけています」

画像8: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「2016年、メキシコ・カレイエスでの私と、パートナーのローレンス。すばらしい場所でしたね」

画像9: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「祖母リチアが亡くなったあと、70年代に建てられた家を、彼女がジャマイカに所有していたことがわかりました。一日でいいから当時に戻り、祖母とその島で過ごしてみたいですね」

画像10: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「ランチの最中に手持ちぶさたでナプキンに落書きをしていたとき、ふとこの女性が頭に思い浮かんだのです。そして、彼女はマルニの2018年春夏コレクションのインスピレーション源になりました。20年代風の女性ですが、スケートボードをしているのです」

画像11: COURTESY OF FRANCESCO RISSO

COURTESY OF FRANCESCO RISSO

「マルニの2018年春夏コレクションの中で気に入っているルックのひとつ。ナイロンのストラップがついたジャカードニットのトップスは、水着をイメージして作ったもの。スカートにはフューシャピンクの花柄の刺しゅうを施して。これは50年代のクチュール・テクニックに影響を受けています」

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