ヘッドノート、ミドルノート、そしてラストノート。ラ・メゾン・デュ・ショコラのシェフ・パティシエ・ショコラティエ、ニコラ・クロワゾーは、ひと粒の新しいチョコレートをつくるとき、3つのノートを考える。それぞれの味わいをどのように作り、どのようにアッサンブラージュする(組み立てる)か。調香師が類いまれなフレグランスをつくるときのようだ。その脳内での作業は、建築家に近いのか、それとも旋律や楽器の音色を組み合わせながら楽曲をつくる作曲家に近いのかと尋ねると、ニコラははにかみながら「どちらかというと、アスリートがトレーニングするのに近いかな」と言う。



ラ・メゾン・ド・ショコラのシェフ・パティシエ・ショコラティエ、

ニコラ・クロワゾー



 マダガスカル、ガーナ、エクアドル、パプア、グレナダ島、ベトナム、ブラジル……。ニコラは日々、世界中から選りすぐられたカカオ豆をテイスティングする。ひと口にチョコレートの原料といっても、含まれる香りは実に多彩で奥深く、広大な世界へとつながっていく。ニコラはそれぞれのカカオ豆から、花々、赤いベリー、黒いベリー、フレッシュな柑橘、香ばしいナッツ、官能的なレザーなど、多種多用な香りを感知する。彼の脳内にはカカオのテイストのライブラリーが構築されていて、日々の鍛錬により、その蔵書の冊数も頁数も増加し、かつ深まっていくのである。


 ニコラはそのライブラリーをくまなく用いて、たとえばシンプルな15種類のカカオをパレットに見立て、それぞれの特徴を生かしながら、200通りものアッサンブラージュを時に粛々と、同時にわくわくと試作する。


 さて、今年のイースターは4月1日だ。ニコラ・クロワゾーが創り上げたのは、なんと魚! どうして魚なのかと、ニコラに尋ねた。フランスのこどもたちはエイプリル・フールに、魚の形に切った紙を誰かの背中にそっと貼るのだそうだ。その誰かさんは、気づかなければその日一日、背中に紙の魚を張り付けて街を歩くことになる。そんなユーモラスな発想から生まれた、色とりどりの魚が「ポワッソン ドゥ パック」だ。厚めのプラリネ、軽やかなプラリネと4種のプレートが重ねられ、ほおばれば口の中は、身も心も弾むチョコレートのシンフォニー!



イースター コレクション「ポワッソン ドゥ パック」各4,350円

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF LA MAISON DU CHOCOLAT



 さて、この魚にはもうひとつ秘密がある。

「イースターといえば、ひよこやうさぎをかたどったチョコレート。私はこどもの頃、これをもらうとクロゼットの服のあいだにそっと隠していたんです。お母さんに見つけられてしまうまで、ずーっとね。可愛すぎて、どうしても食べられなかった」。だから、今年のニコラのイースターのチョコレートは、魚。パキっと割ったり、ガブっとかじって、おいしく食べてしまえるように。



問い合わせ先

ラ・メゾン・デュ・ショコラ 丸の内店

TEL. 03(3201)6006

公式サイト






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