最近、「東京でおすすめのおいしい店は?」と聞かれると、中国料理をすすめるというマッキー牧元氏。ここ数年、その料理やサービスが劇的に変化し、従来のイメージを覆す中国料理の店が次々と開店しているのだ。たとえば中国の田舎の惣菜料理がなんとも新しい白金の「蓮香(レンシャン)」や、少数民族の珍しい料理にアレンジを加えた代々木上原の「Matsushima」など。未知の味との出会いが待つ注目の中国料理店、連載第2回は、六本木と表参道の人気店2軒を紹介する。






 去年開店した「Matsushima」と「蓮香」の2軒は、ともに稀少でマニアックな料理でわれわれを楽しませてくれる。一方で、料理の提供の仕方に新しさを持ち込んだのが、六本木の「虎峰(コホウ)」である。


 今までの中国料理店であれば、グループで出かけても、せめて10皿の料理を食べるのが精いっぱいであった。しかし「虎峰」の長いカウンター席に座ったわれわれに出されるのは、30数皿の小皿料理である。


 しかも、二人だろうが一人だろうが、30皿の料理を楽しむことができる。一斉スタートではなく、お客さんの食べる速度も違うので、料理長はじめ、オペレーションはかなり大変だろうと思うが、待たせることはない。じつにスムースで、間合いがいい。おそらく働く全員に、今までと違うサービスで喜んでもらおうという、心根があるのだろう。


 料理は、よだれ鶏やチャーシュー、黒酢の酢豚、野菜の炒めといったおなじみのものから、エロスを感じさせる「ウニのシェリー酒漬け」。外側はパリッと中はふんわり焼き上げたヒラメに、うま味の濃いあさりソースを添えた皿。「ボタンエビのアメリケーヌソース」といった、個性的な皿もある。


 それらが巧みに組み合わされて出されるので、飽きることがない。またひと皿ひと皿に酒を合わせたペアリングコースもあり、これが知的好奇心をくすぐる。



「ウニのシェリー酒漬け」




「平目のソテー」



 たとえば丹念にとられた上質なスープの「上湯」の動物性のうま味に、泡を飛ばして少し温めたシャンパンのドラピエを合わせる。あるいは、豚バラのチャーシューに青島の黒ビールの苦みを合わせる。「フカヒレの白湯煮込み」の溶け込んだコラーゲンの深みとフカヒレの香りには、長期熟成日本酒である「若水」のひねた香りと熟成した甘みを合わせるなど、変幻自在である。これまた今までの中国料理店ではなかった試みであり、多皿コースの提供とともに、追随する店が増えてきそうな予感がある。



「フカヒレの白湯煮込み」



 新しい中国料理の動きは、6年ほど前から始まった。旧来の大型高級中国料理店の出店が減り、30代の料理人が小型の店を始めることが多くなったからである。若いゆえに、資金の問題もあって小型化し、少人数で営むために、カウンター併設か、カウンターだけの中国料理店ができた。結果として、「カウンター中華」と呼ばれる、少人数もしくは一人でも中国料理を楽しめるようなスタイルになったのである。こうしたカジュアル化は、一気に進んだ。「カウンター中華」は、ここ4年で10数店舗、開店している。またカジュアル化によって、客層も広がった。一方、若い料理人のしなやかな感性で、従来の四大料理に属さない料理を出す店も増えてきた。


 先の「蓮香」や「Matsushima」が代表格で、彼らは同世代である。二人とも大都市だけでなく、中国の地方に出向き、味を確かめ、得てきたものを再現しようとしている。その点が今までにはない。また、これらの店では黄酒(ホアンチュウ)や白酒(パイチュウ)といった中国酒も多く、自然派ワインも揃えて、紹興酒一辺倒であった時代からも脱却し始めている。料理ともども、われわれの選択肢としての幅が広がったのが、なによりもうれしい。



(写真右)COURTESY OF KOHO


虎峰(コホウ)


和食やフレンチの技法も採り入れ、変化に富んだ30数品を毎日仕込むのは「正直、しんどいです(笑)」と山本雅シェフ。おまかせコース ¥13,000(税・サービス料込)のみ。アルコールペアリング ¥8,000~


住所:東京都港区六本木3-8-7 PALビル1F

電話:03(3478)7441

営業時間:17:00~22:00(LO)

定休日:日曜・年末年始・お盆時期

公式サイト:www.koho-roppongi.com