「セクレト」とはスペイン語で、「秘密」の意味。オーナーシェフである薮中章禎さんが、「おいしい秘密基地にしてほしい」という気持ちを込めて名付けた。


 閑静な住宅街に、これまた目立たない造りの入り口。そもそも立地自体が謎めいているのだ。初めての訪問では、迷う人が多いにちがいない。かくいう私も、スマホを見ながら辿り着けるはずが、結局、お店のスタッフに迎えに出てもらったのでした。



カウンターに置かれているサービスプレートは、立方体の有田焼。

ひとつずつ手作りで、「SECRETO」の文字が彫られている



 平日は19時一斉スタート。予約時に「早めにいらしてくださいね」と言われてうかがった。ウェイティングバーでシャンパンをゆっくり楽しむ時間は、ディズニーランドの未知のアトラクションに参加する直前のよう。ほのかな興奮に包まれる。1組ずつダイニングフロアへ案内され、ステージのようなキッチンを囲むカウンターに着席。


 薮中シェフは、フランスの星付きレストランやスペイン「エル・ブジ」で修業を重ね、マンダリン オリエンタル ホテル東京「タパス モラキュラーバー」のスーシェフとして活躍。昨年10月に独立してオープンした。キャリアを生かして、「分子調理」と呼ばれる科学的調理法を駆使し、お皿に驚きをのせる。メニューはデザートを含め、12〜13皿のコース1種類のみ。ペアリングされたお酒もしくはノンアルコールドリンクが、お皿ごとに付く。メニュー内容は2ヶ月ごとに変わるが、コースの序盤に登場するフォアグラ料理は季節ごとに形を変えながらも、定番にするつもりだと言う。



ステージのようなキッチンで、

液体窒素を使ってアイスクリームを作る薮中章禎シェフ(右)。

石川県は能登の出身。能登直送の魚介類を使う



「僕はフレンチの料理人としてスタートしました。フランスらしい食材で、とても大切にしていきたいのがフォアグラです。この素材は、調理法にそれほどバリエーションがない。だからこそ、僕なりにさまざまなスタイルで挑戦していきたいと考えたんです」

 オープン当初に訪れたときは、「フォアグラ・りんご・赤紫蘇」。りんごを薄く薄く切ってドライフルーツにし、フォアグラのテリーヌをはさみ、凍らせた赤紫蘇のジュースと合わせていた。



「フォアグラフレンチトースト」。

目の前でフォアグラがふわふわと削られていく様子に、

思わず歓声が上がる



 この冬は「フォアグラフレンチトースト」だ。お客さまの目の前で、凍らせたフォアグラのテリーヌをフレンチトーストに削りかける。フレンチトーストはフランスパンのまわりをバーナーで焦がしてカリカリに仕上げてあり、ほんのり温かい。フォアグラは液体窒素を使ってマイナス196℃で凍らせている。シンプルなフレンチトーストの上に、テリーヌが雪のようにふわふわと舞う。


 この温度差と食感の違いから生まれる未知の美味しさと驚き。添えられたりんごのジャムがフォアグラの旨みを一層際立たせる。ペアリングのお酒として添えられたのが、富山県の酒蔵・桝田酒造の貴醸酒「満寿泉」。貴醸酒とは、水ではなく、酒で仕込んだ甘口で濃厚なお酒。フォアグラと貴腐ワイン「ソーテルヌ」のペアリングは古くからの定番だが、ソーテルヌではなく、シェフは貴醸酒を選んだ。



北海道産のウニに、生クリームと飴色に炊いた玉ねぎを合わせてムースに。

キャビアの塩味をアクセントにした。

フランス・ラングドック地方のフレッシュな辛口白ワインを合わせて



 このような未知の味を仕立てる一方で、クラシカルなソースとシンプルに火入れした魚や肉料理も登場する。カウンター内のキッチンでは、シェフがさまざまな調理技法を駆使する様子を披露。ゲストがカウンター内に入り、実際に液体窒素でアイスクリームを作ってみるというミニイベントも。


 料理だけでなく、ワインや日本酒、器、空間から、シェフとゲストとの対話まで。あらゆる要素がからみあって、食を愛でる時間が生まれる。レストランの新しい形として、これからの進化が楽しみな一軒だ。



SECRETO(セクレト)

住所:東京都新宿区二十騎町2-23 ランピオンイゴー102

電話:︎ 03(6265)3664

営業時間:18:40ドアオープン、19:00スタート

不定休

ディナーコース¥16,000(料理・ペアリングのドリンク、税・サ込)

公式サイト




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