フードライター北村美香が自信をもっておすすめする美味の店。その技と思いを凝縮した「食べるべきひと皿」とともに、おいしさの理由をひもとく連載第8回

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY KATSUMI OHYAMA

 フランス料理の名店「ル ゴロワ」の大塚健一・敬子夫妻が、大勢の常連客に惜しまれながら東京・青山のお店を閉め、北海道へ移住したのは2016年6月だった。

 紆余曲折を経て今夏、大塚夫妻の新しいお店が富良野の丘にオープンした。名前は「ル・ゴロワ フラノ」。食材を大切にしてきた大塚シェフの料理と同様、お店自体が自然と共存しているような造り。土や木材、石、煉瓦などの自然素材をふんだんに使い、エントランス脇では、左官アーティスト・挟土秀平氏の作品が迎えてくれる。

画像1: Vol.8
この店の、このひと皿。
「ル・ゴロワ フラノ」の
旬菜 ル・ゴロワ風サラダ
画像: (写真上)自然素材で建てられた一軒家レストラン。店内は無垢材のテーブルと椅子で揃えられ、土壁には挟土秀平さんの作品が飾られている (写真下)馬たちも幸せそうに暮らしている

(写真上)自然素材で建てられた一軒家レストラン。店内は無垢材のテーブルと椅子で揃えられ、土壁には挟土秀平さんの作品が飾られている
(写真下)馬たちも幸せそうに暮らしている

 テーブルにつくと、ゆったり草を食んでいる大塚家の4頭の馬が、大きなガラスの向こうに見える。遠くに富良野の街と大雪山が。日が落ちれば、森の闇の間に街の灯りがキラキラと煌めく。この空間を味わうためでも、遠方から訪れる価値がある。
 北海道に魅せられた大塚夫妻は、20年ほど前からこの地の食材を取り寄せてきた。いま、その食材たちが育つ土地に暮らすことで、シェフの料理は確実にパワーアップした。

 メニューは青山時代とそれほど変わっていないものの、この新しいお店を初めて訪れるなら、ぜひ召し上がってほしいのが「旬菜 ル・ゴロワ風サラダ」。訪れるたび、私が決まって注文する一品だ。約18年前からシェフが作り続けてきた定番の味。旬の食材を、その食材がいちばん引き立つように調理し、たっぷりの野菜とともにサラダに仕立てている。

画像: 「旬菜 ル・ゴロワ風サラダ」 ランチコース「旬菜 ル・ゴロワ風 サラダランチ」¥2,970、もしくはディナーコース¥7,800で

「旬菜 ル・ゴロワ風サラダ」
ランチコース「旬菜 ル・ゴロワ風 サラダランチ」¥2,970、もしくはディナーコース¥7,800で

 たとえば、牛肉はローストビーフに、鹿や鴨ならテリーヌに。小魚をフリットに、帆立貝柱やイカであればポワレして、鮭の場合はスモークに。ほかに生ハムやモッツァレラチーズも。アスパラガスやブロッコリー、にんじんは、ゆでたりグリルしたり。葉野菜は数種類とり合せ、特製わさびドレッシングで和えておく。

「『盛り過ぎ!』とマダムに注意されたこともあるんです」とシェフが笑うほど、盛りだくさん。丁寧に調理されたひとつひとつの味は、どんな順番でいただいても見事に調和し、食べても食べても飽きることがない。青山でも大好きな一品だったけれど、今回富良野でいただいたサラダは、お皿の上で食材がピカピカ輝き、さらにバージョンアップしていた。

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