シェフとして高い評価を受けるウィリアム・ブラッドリー。

豪華なゴルフリゾートに併設された自身のレストラン「アディソン」にて

PHOTOGRAPH BY JESSICA HAYE , CLARK HSIAO

 サンディエゴにある「フェアモント・グランド・デル・マール」は、249室を備えた地中海風の高級リゾートホテルだ。ここで供される食事は、おいしくなければならないが、華やかである必要はない。ゲストたちはこのホテルの5ツ星のスパやチャンピオンシップ・ゴルフコース、乗馬やポルシェのハイブリッド駆動システム“E-パフォーマンス”の試乗会といったアクティビティ目あてにやってくる。ゴルフコースの18番ホールを見下ろす断崖に佇むのが、レストラン「アディソン」だ。威厳はあるが、格天井や落ち着いた色の木材、燃え盛る暖炉といったインテリアは、よくある伝統的なアメリカ風の裕福さをかもし出している。

 

キャビアの缶に収められ、オシェトラキャビアの下に隠されたサーモンのコンフィ。ブリオッシュを添えて。 PHOTOGRAPH BY JESSICA HAYE AND CLARK HSIAO

 レストランのスタッフはとびきり温かくて親しみやすく、こびることなく気配りが行き届いている。その理由のひとつに、ゲストを1から3の段階に分類するシステムがある。たとえばこんなふうだ。渋滞のせいで調子がすぐれないカップルがいることに接客係が気づく。すると接客係は給仕スタッフに「あのテーブルは3のお客さまで、少し丁寧なサービスが必要かもしれない」と伝える。一方、1はというと、見るからに楽しもうという気分に満ちあふれ、そこまで注意を払う必要がない客だ。こんなふうに配慮が行き届き、入念に調整された店の雰囲気を生み出しているのが、40歳のアディソン総料理長、ウィリアム・ブラッドリーである。しかも彼は、このもてなしの裏のからくりを包み隠さず明かしてくれる。そのことに誇りをもっているのだ。「こういったことをしてこそ、シェフとしての務めが果たせるんだ」と彼は言う。「リネン類や財務管理、日々の店の経営といったなにもかもを考えることによってね」