せきね きょうこ 連載
新・東京ホテル物語<Vol.23>

New Tokyo Hotel Story “星野リゾート OMO5 東京大塚”
ホテルジャーナリスト、せきね きょうこが独自の視点でおすすめの東京ホテルを案内。連載第23回目は、ディープな下町を深堀り! 街とともにゲストを迎える「星野リゾート OMO5 東京大塚」

BY KYOKO SEKINE

 東京の文京区と豊島区が接する大塚は、昔ながらの町並みが残る一方で再開発が進む開発途上の地域である。それによって駅舎はほかの山手線の各駅同様のモダンな駅ビルになり、周囲には高層マンションが建ち……と、独特な土地の文化や伝統が失われつつある。街のモダニズム化や発展は望むところだが、それでも長い歴史の中でその土地に育まれてきた独自色は、ぜひ残して欲しいと願うひとりである。

画像: 駅を降りると見える新築のホテル。1階の入り口からエレベータで4階へ直行、「OMOベース」でチェックイン

駅を降りると見える新築のホテル。1階の入り口からエレベータで4階へ直行、「OMOベース」でチェックイン

 ここでご紹介する「星野リゾート OMO5 東京大塚」への乗降駅は、そのJR大塚である。最寄りの北口を出ると、真ん前に建つのはなんとブティックホテル(ラブホテル)、一本横に入った路地には、夜になると様相ががらりと変わるという怪しげな繁華街もある。2013年、この一帯の再開発は、しゃれた商業施設を伴うJR大塚駅に始まった。しかし、ワクワクするのはそうした新しさよりもむしろ、ホテルから聞いた「町を深堀りしていくと本当におもしろい!」という情報だ。時代に逆行するような個人商店や老舗店舗など、時代ものの“大塚カルチャー”がそこかしこに残されているというのである。

画像: レセプションのボードは、ラウンジとカフェを隔てる役目も。 カフェではオリジナルのスイーツやサンドイッチ、パンも手作り

レセプションのボードは、ラウンジとカフェを隔てる役目も。
カフェではオリジナルのスイーツやサンドイッチ、パンも手作り

「星野リゾート OMO5 東京大塚」の誕生は、2018年5月9日。滞在ゲストに、この街のおもしろさを発掘し、独特の地域性あふれる大塚を楽しんでもらおうという企画が目白押しだ。ホテルはJR山手線大塚駅北口からわずか徒歩1分。駅前に、13階建ての真新しい「星野リゾート OMO5」のロゴを飾ったビルがそびえている。都市観光ホテルとしての位置づけで誕生した「OMO」ブランドは、北海道旭川の「OMO7」に続き、ここ大塚が2軒めとなる。

画像: エレベーターを降りるとすぐに目につく「ご近所MAP」。 見ているだけで散歩に出かけたくなる

エレベーターを降りるとすぐに目につく「ご近所MAP」。
見ているだけで散歩に出かけたくなる

 私は1泊の宿泊だったが、滞在はリアルに満足できるものだった。「悪くない」ではない、このホテルならではのとても新しい過ごし方に惹かれた。客室は全125室、広さはすべてが19㎡と、けっして広くはない造りだが、客室のそれぞれの壁色を変え、“四季を奏でる”として4色遣いになっている。やさしいパステルカラーの4色は、泊まる人の心模様しだいでリクエストできそうだ。「YAGURA Room」と呼ばれるこれら客室は、2層に組まれた櫓が部屋のほとんどを占めており、下の階はリビングとして、またデイベッドとしても利用できる。さらに、上階にあるツインベッド以外に3つめのベッドとしても利用可能だ。

画像: 「YAGURA Room」の室内。こちらはピンク系の客室。 櫓の上階にはツイン仕様のベッドがおかれている

「YAGURA Room」の室内。こちらはピンク系の客室。
櫓の上階にはツイン仕様のベッドがおかれている

画像: ツイン仕様の櫓の2階。 天井は低いが、寝心地はすこぶるいい

ツイン仕様の櫓の2階。
天井は低いが、寝心地はすこぶるいい

 広い場所でゆったりしたければ、OMOベース(基地)と呼ぶ4階のロビーラウンジで過ごすのがいい。ラウンジ仕様の開放感のあるスペースと、レセプションデスクを隔てて明るいカフェが併設されている。オープン直後にも関わらず、カフェにはご近所の年配女性陣の井戸端会議風な姿も見受けられ、OMOが掲げる“ご近所づきあい”がすでに始まっているようだ。そのカフェは滞在ゲストの朝食の場でもあり、工夫された朝食が提供されている。

画像: 朝食は、パイ生地の器にシチューやサラダを詰めたヴォロヴァンが主役の「OMOrning Set」。 シチュー2種類、サラダ、フルーツの4種類で展開し、写真は「魚介のフリカッセ」。 下町深川の佃煮「あさり」をメインに海老やホタテが入ったホワイトシチューは美味! PHOTOGRAPHS: COURTESY OF OMO5

朝食は、パイ生地の器にシチューやサラダを詰めたヴォロヴァンが主役の「OMOrning Set」。
シチュー2種類、サラダ、フルーツの4種類で展開し、写真は「魚介のフリカッセ」。
下町深川の佃煮「あさり」をメインに海老やホタテが入ったホワイトシチューは美味!
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF OMO5

「旅のテンションを上げる」というコンセプトを掲げた、星野リゾート初の観光型ホテル「OMO」。ホテルには、小さい子供連れからビジネスマン、年配客、もちろん観光客までという幅広い客層でにぎわっていて驚いた。ノスタルジックで気どらない街大塚と、スタイリッシュで気どらないホテルの相性はとても良さそうだ。

星野リゾート OMO5 東京大塚

住所:東京都豊島区北大塚2-26-1
予約電話:0570(073)022(予約センター)
客室:全125室
料金:¥7,000~(2名1室利用時の1名1泊料金。サービス料・税込) 
 ※日によって料金が異なるため、要問合わせ
公式サイト

せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および 関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com

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