華やかさは控えめだが、サーフィンや漁師のコテージ、剥きたての牡蠣といった素朴な魅力に溢れた場所。フランス、ボルドーの西側に位置する岬、カップ・フェレを案内する

BY BIANCA BOSKER, PHOTOGRAPHS BY SABINE MIRLESSE, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI(RENDEZVOUS)

 フランス人は今や、南フランスにある高級リゾートのコート・ダジュールを外国人に譲ってしまっていると言っていいだろう。外国人たちにレストランの席を奪い合わせたり、渋滞に巻き込まれる経験をさせたり、ビーチタオルに過剰なまでに高いお金を払わせたりしているのだ。それでいて、自国の最も良い避暑地のひとつは、自分たちのために取っておいている。そこは、フランスの南西部の沖に位置するカップ・フェレという場所である。松の木で覆われた吹きっさらしの半島にある。

標高110メートルのピラ砂丘は、ヨーロッパで1番標高の高い砂丘である

 フランスの南東部に位置する賑やかなカップ・フェラーとは混同しないでほしい。カップ・フェレは、全長11マイルの砂浜でできた細長い岬で、東側はアルカション湾のキラキラとした水の流れに、西側は大西洋のうねりに縁取られている。そこは100年ものあいだ、主に牡蠣とその牡蠣を養殖する漁師たちが暮らす場所であった。車で1時間ほど離れたところで暮らすボルドーの裕福な家族たちは、1950年代頃までにはカップ・フェレの素朴な魅力に気づき始めていた。そして彼らは、岬にある青い雨戸のついた古びた木製の小屋で夏を過ごすようになった。ここ10年間は、遊び好きな人々をパリや海外からも多く受け入れるようになり、フランスにおけるケープ・コッド(アメリカ・マサチューセッツ州にある夏の観光地として有名な半島)として名声を獲得するようになった。しかし、ここは、セレブリティとサーファーが交流したり、ヨットではない「ピンネス」と呼ばれる屋根のない細長い木製ボートが優先される、そんな場所なのである。

 昨年7月に開通したパリとボルドーを2時間で結ぶ高速鉄道は、さらに多くの新しい信者を呼ぶことになるだろう。だが、より多くの観光客が訪れるようになったとしても、カップ・フェレを訪れる人が抱く「理想の1日」のイメージは変わることがないだろう。その「理想の1日」とは、ミモザの香りのするそよ風を感じながら、高床式の釣り小屋の脇を自転車で通り過ぎ、そこからフェリーに乗ってヨーロッパで1番標高の高いピラ砂丘まで足をのばし、そのあとは入り江の脇に座り、少量の白ワインと一緒に、冷たい海から獲れたばかりの新鮮な牡蠣を食べることである。

<STAY>

「ラ・メゾン・ドゥ・バッサン」
みずみずしく茂ったブーゲンビリアと葉がついた蔦の後ろには、11部屋しかないホテルが建っている。白いリネン、サイザル麻のラグ、磨かれた木の壁には、海の絵がかかっている。これは、ケネディ家の夏の静養所から得たアイディアである。このホテルは、カップ・フェレの象徴である岬の灯台から歩いてすぐのところにある。レストランでは伝統的なフランス料理をシンプルにアレンジしたものを提供している。例えば、フォアグラのテリーヌ、コキーユ・サンジャック(ホタテ貝)の料理、ポテトやサラダが添えられ、ビストロ・スタイルで提供されるアヒルのコンフィなど。これらの料理を青いフレンチ・スタイルの窓と熱帯地方の花々に囲まれたベランダで堪能するのが一番のオススメである。
www.lamaisondubassin.com

「ラ・メゾン・ドゥ・バッサン」のプライベート・バルコニー

「ラ・メゾン・ドゥ・バッサン」のクラブ風バー

「ラ・コルニッシュ」
2010年、カップ・フェレの常連であるデザイナーのフィリップ・スタルクは、湾の反対側の本土ピラ・シュル・メールにある、1930年代のネオ・バスク・スタイルの狩猟小屋を29部屋のリゾートへと変身させた(近くにある姉妹ホテル「オテル・アーイッツア」は2016年にオープン)。建物の外には、大西洋を見渡せるインフィニティ・プールがあり、その脇には縞模様のラウンジチェアーが置かれている。一方、室内にはパステルカラーの羽目板の壁に、左右非対称な鏡、床から天井までを覆うカーテンが掛けられていて、超現実的主義的でミニマルな雰囲気を客室に与えている。このホテルのレストランから見るピラ砂丘とアルカション湾は、それだけでここを訪れる理由としては十分であるが、そこで提供される大皿に盛られた新鮮なラングスティーヌ(ヨーロッパアカザエビ)、ハマグリ、ムラサキイガイ(ムール貝)、牡蠣もまた、ここを訪れる理由として十分なのである。
lacoorniche-pyla.com

ビーチに面した「ラ・コルニッシュ」のプール

「コート・サーブル」
コート・サーブルは、市街地によくある素朴な宿泊施設ではなく、高級感のある宿である。ベイサイドに建つ物件の15の部屋には、アルベート・カミューや老子などオーナーが好きな作家の名前が付けられている。内装には幅広いスタイルの装飾が施されているが、どれもこの土地の歴史から発想を得たものである。作家マグリット・デュラスの名前が付けられた「デュラス・ルーム」には、漂白された木、剥き出しになった梁、シーフォーム・グリーン色のリネンなどが使われており、カップ・フェレの漁師小屋へのオマージュとなっている。また、オスカー・ワイルドにちなんだ「ワイルド・ルーム」は、フェイクの船の丸窓、黒く磨かれた羽目板と鉤足のバスタブなどが置かれている。これは、アルカションに19世紀末から建つ威厳ある別荘を参考にしている。
cotesable.fr.