日本美術ライターの橋本麻里が長年憧れの地であった南米へ。南北4,000kmにわたってナスカ、モチェなど多種多様な文化が盛衰を繰り返した古代アンデス文明。その謎に包まれた遺跡を旅した

BY MARI HASHIMOTO, PHOTOGRAPHS BY SATORU MURATA

 ひと休みして向かったのは、ラパスから車でおよそ2時間、チチカカ湖にほど近い、標高約4,000〜3,800mの高原に残されたティワナク遺跡である。今回の『古代アンデス文明展』は、タイトルからも明らかなように、シカン、ナスカ、インカといった、キャッチーな個別の遺跡・文化の名を冠していない。なぜなら時間的には約1万5000年、空間的には南北4,000km、標高差4,000mに及ぶ広大な地域で盛衰を繰り返した9の文化、6つに区分される時代を網羅することで、古代からスペイン人がインカ帝国を征服するまでの古代アンデス世界の全体像を見渡そう、という野心的な展覧会だからだ。そしてティワナクは、大きく山側(南)と海側(北)に分けられる古代アンデスの地理的文化圏のうち、山の文明を代表する遺跡であり、紀元前2世紀頃から1100年頃までチチカカ湖の畔で栄えた、高原地帯の核となる古代都市なのだ。

画像: ドローンで空撮したティワナク遺跡全景。破壊の爪痕が大きく、かなり強引な復元作業が行われたため、太陽の門など石造建造物の位置は、当初とずいぶん異なってしまったという

ドローンで空撮したティワナク遺跡全景。破壊の爪痕が大きく、かなり強引な復元作業が行われたため、太陽の門など石造建造物の位置は、当初とずいぶん異なってしまったという

画像: ティワナク遺跡「カラササヤ」外周の端正な石積み

ティワナク遺跡「カラササヤ」外周の端正な石積み

 荒涼とした大地に広がるティワナク遺跡には、7段の基壇からなる丘のようなピラミッド「アカパナ」、半地下式構造の神殿「カンタタリータ」、そして遺跡の中心部と想定され、太陽の門や巨大な石造が建つ「カラササヤ」など、見事な石積みの技術を駆使してつくられた石造建築物がいくつも点在している。なかなか全体像を一望、とはいかない場所だが、限られた視界を劇的に広げてくれる撮影用のドローンが、ふわりと宙に舞い上がった。操縦するのはツアーの公式カメラマンで、中米・マヤ文明が専門の考古学者でもある畏友の村田悟さん。世界遺産にも指定されているティワナクの上空をドローンが飛ぶのは、これが初めてとなる。

 山の文明、ティワナクを二日にわたって堪能したあとは、ペルーの海岸沿いにある首都リマへ、一気に高度を下げる。遺跡はない代わりに、国立考古学人類学歴史学博物館、天野織物博物館、ラファエル・ラルコ・エレラ博物館など、アンデスの考古遺物を見るにはうってつけの、それぞれ個性的な施設が揃っている。なかでも天野織物博物館は、故・天野芳太郎氏が収集したコレクションを展示する、アンデス文明に特化した専門博物館。2015年に大規模なリニューアルを行い、現在では絞り染めや綴れ織り、刺しゅう、レース、またそれを制作するための道具や素材、染料のサンプルなど、それぞれの時代や地域ごとに個性の異なるテキスタイルを、一堂に集めた展示を行なっている。

画像: 天野織物博物館の展示室で。ナスカ文明に属する絞り染めが展示されていた。日本の鹿の子絞りと、技法も見た目もまったく同じ

天野織物博物館の展示室で。ナスカ文明に属する絞り染めが展示されていた。日本の鹿の子絞りと、技法も見た目もまったく同じ

画像: 現在は織物に特化したがユニークな土器も多数所蔵、一部は展示されている。地下収蔵庫にはミイラも

現在は織物に特化したがユニークな土器も多数所蔵、一部は展示されている。地下収蔵庫にはミイラも

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