誰もが知っているポップスターの、誰も知らないアーティストの横顔

BY MICHINO OGURA, PHOTOGRAPHS BY TAKEMI YABUKI(W), HAIR & MAKEUP BY JUNKO KANEDA

「撮影に使ったカンペをもらってスケッチしたり、セットの小道具のPCで描いたり。場所も画材も選ばない。描きたいときが描きどき。いつでも描けるのが僕なりのスタイル」という香取。<後編>では、アーティストとしての“作品との向き合い方”を語る。

『TANK 100』のために制作した作品、アートとの向き合い方について語る ©T JAPAN

 香取は絵を描く感覚をまるで“ゲームのよう”と表現する。まずは白いキャンバスを用意し、トランクの中に大量にストックしてある絵の具の中から、色を確認せずにひとつをつかみ出す。そして、自然と思いついた線やモチーフを描き進めて、「なんで、この色がここでくる?」「いやいや、この色のとなりに、この色はないでしょ」「色がこうくるなら、ここは塗らないでおこう」と自問自答しながらルールづくりをするのだと打ち明けてくれた。このルールは無限大の組み合わせがあり、毎回違った着地点になる。色やモチーフが増殖していくうちに楽しくなってきて、筆は止まらない。描いている瞬間は完全に“自由”でいるのだろう。

画像: いつでも絵を描きだせるように、アトリエの机の下の引き出しやトランクに大量のアクリル絵の具を常備している

いつでも絵を描きだせるように、アトリエの机の下の引き出しやトランクに大量のアクリル絵の具を常備している

画像: 筆はほとんど使わない。絵の具を簡単に持ち運べるよう、箱に収納している

筆はほとんど使わない。絵の具を簡単に持ち運べるよう、箱に収納している

画像: 絵の具のしたたりを面白く感じたところから増殖していった作品 © SHINGO KATORI

絵の具のしたたりを面白く感じたところから増殖していった作品
© SHINGO KATORI

 このようにして作られた膨大な数の絵画は、今すぐにでも展覧会を開く準備ができているようにも思える。「僕が描いた絵をいつかみんなに見てもらいたいと思っています。これまで、僕は見られる人生を過ごしてきたから、絵も見せたい。そのために描き続けているのかもしれません。キュレーターや美術に詳しい人たちにアドバイスをもらっていますが、今は、美術館の高い天井や広くて白いスペースに負けないよう、大きなサイズの絵を描かないと、と思っています」

画像: ピエロはこんなにもハッピーで愛に彩られた表情で出現することも © SHINGO KATORI

ピエロはこんなにもハッピーで愛に彩られた表情で出現することも
© SHINGO KATORI

画像: あえてアウトラインを強調しないというルール。やさしいネオンのような印象を与える © SHINGO KATORI

あえてアウトラインを強調しないというルール。やさしいネオンのような印象を与える
© SHINGO KATORI

 彼が思い描く夢の個展について聞いてみると、これまでステージの演出を担っていた香取らしく、オーディエンスをワクワクさせるアイデアを練っていた。「個展期間中にマジックミラーの部屋を作って、そこに僕が住みたい。その部屋の中でずっと絵を描いて、どんどん作品を発表していくインスタレーションに挑戦したいんです。自分を展示するって感覚ですよね。見に来てくれる方から、ネット経由で言葉を受け取ると、ときどき僕からの返事がかえってくる、“会話”もあるといいな。でも、まずは絵を描くだけのライブペインティングはどうだろう? 劇場で、幕が上がると、僕が大きな絵を描き続けている。観客には最後に仕上がった絵のデータを配信するのって面白くないですか?」

画像: アルファベットをちりばめた作品と。バスキアのグラフィティアートを思わせるスピード感のある作品

アルファベットをちりばめた作品と。バスキアのグラフィティアートを思わせるスピード感のある作品

 現在、カルティエ ブティック 六本木ヒルズ店で開催中の『TANK 100』ギャラリーで発表したペインティングとオブジェの2作品について、彼は語る。「『TANK 100』ギャラリーで発表したオブジェを照明にしたいというアイデアがありました。腕時計の『タンク』が100周年だからバースデイケーキのようなかたちの照明オブジェをイメージしているんです。そのヒントが僕のリビングに飾ってあるベネチアングラスのシャンデリアです。シンプルなオブジェなら話が早いのですが、やっぱり光を灯したくなるのって、自分でも不思議なんですよね。舞台の演出を考えていたときにも思っていましたが、照明って、セットがデザインされて、そこに衣装が決まってきて、でも絶対に照明がないと完成しない。これがないと始まらないでしょっていう存在なんです。だから光に惹かれるのかな」

“自由”と“光”を味方に、アーティストとしての才能を次々に私たちに見せてくれる香取慎吾。彼の進む先は明るく照らされている。

※イベントは終了いたしました。
<EVENT>
『TANK 100』
カルティエのアイコンウォッチ “タンク”の誕生100年を記念したギャラリーが期間限定で開催。このイベントのために制作された作品も展示中だ。

会期:~11月26日(日)
営業時間:11:00~21:00
住所:東京都港区六本木6-10-1
六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F
電話:0120-301-757(フリーダイヤル)
公式サイト

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