写真、建築、舞台美術と、杉本博司の創作の領域は幅広い。人々をつねに驚かせる、多岐にわたる活動の背景には 「時間」をどうとらえるかという追求があった

BY YOSHIO SUZUKI, EDITED BY JUN ISHIDA

画像: 東京都写真美術館改装後の展覧会で発表される新作〈廃墟劇場〉より 《Paramount Theater, Newark》2015 閉鎖した映画館を探し、 大光量のプロジェクターを設置し映画一本を上映する。往年のにぎわいをしのばせる建物が朽ちていく時間と 焼きつけられた永遠である映画の中で起こる出来事が一枚のフィルムの上に ©HIROSHI SUGIMOTO/COURTESY OF GALLERY KOYANAGI

東京都写真美術館改装後の展覧会で発表される新作〈廃墟劇場〉より 《Paramount Theater, Newark》2015
閉鎖した映画館を探し、 大光量のプロジェクターを設置し映画一本を上映する。往年のにぎわいをしのばせる建物が朽ちていく時間と 焼きつけられた永遠である映画の中で起こる出来事が一枚のフィルムの上に
©HIROSHI SUGIMOTO/COURTESY OF GALLERY KOYANAGI

 映された映画館は、テレビやビデオに娯楽の主導権を渡す前の時代のもの。主にアメリカで撮影された映画館には壮麗な建築のものが多い。それは、ヨーロッパのようにオペラの文化をもたなかったこの国ならではの発展の仕方をしていったのだった。

 近年取り組んでいるのは、劇場の廃墟に大がかりな映像投影装置を持ち込んで、実際それが使われていた往時を再現したものだ。これは映画産業の兵どもの夢の跡なのか、あるいは映画館のゴーストなのか。

 映写されるごとに命を吹き返す映画を、廃墟になり風雪にさらされるがままになった建物のスクリーンに映写する。光と影でいえば、映画は光で廃墟は影だ。蘇るものと朽ちゆくもの。ベクトルも速度も異なるふたつの時間でさえ杉本はたった一枚のフィルムに収める。

画像: 〈ジオラマ〉シリーズ 自然史博物館の剝製と背景画でできた情景を大判カメラで撮り、まるで現実の風景のように見せる。 《Alaskan Wolves》1994 ©HIROSHI SUGIMOTO/COURTESY OF GALLERY KOYANAGI

〈ジオラマ〉シリーズ
自然史博物館の剝製と背景画でできた情景を大判カメラで撮り、まるで現実の風景のように見せる。
《Alaskan Wolves》1994
©HIROSHI SUGIMOTO/COURTESY OF GALLERY KOYANAGI

位相の異なる時間をも収めた

 1970年代から取り組み、発表された杉本の初期三部作が〈ジオラマ〉〈劇場〉〈海景〉である。静謐な世界を精緻なプリントで仕上げた美しい写真作品だと誰もが感じた。ニューヨークで活躍する優れた日本人写真作家が現れた。20世紀中、杉本はそんな注目のされ方、愛され方をしていた。しかし、杉本がそれだけの枠に収まらず、時間を扱い、記号化、象徴化する総合的なアーティストであることを21世紀になってわれわれは知ることになる。彼の活動が写真という枠を超え、さまざまな領域に広がっていった結果である。

 

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