写真、建築、舞台美術と、杉本博司の創作の領域は幅広い。人々をつねに驚かせる、多岐にわたる活動の背景には 「時間」をどうとらえるかという追求があった

BY YOSHIO SUZUKI, EDITED BY JUN ISHIDA

画像: 「江之浦測候所CG」。これは100メートルギャラリーの突端部分 (完成予想図)。まるで陸に乗り上げた船。長いギャラリーだが、 柱にあたる構造的な部分は片側(画像奥側)にしかなく、 もう片側はガラスがカーテンのように吊り下げられているだけ。 重力を無視するかのような建物が独特の空間をつくり上げる ARCHITECT BY NEW MATERIAL RESEACH LABORATORY/HIROSHI SUGIMOTO+TOMOYUKI SAKAKIDA

「江之浦測候所CG」。これは100メートルギャラリーの突端部分 (完成予想図)。まるで陸に乗り上げた船。長いギャラリーだが、 柱にあたる構造的な部分は片側(画像奥側)にしかなく、 もう片側はガラスがカーテンのように吊り下げられているだけ。 重力を無視するかのような建物が独特の空間をつくり上げる
ARCHITECT BY NEW MATERIAL RESEACH LABORATORY/HIROSHI SUGIMOTO+TOMOYUKI SAKAKIDA

 場所は小田原の海が迫るみかん山である。最初は茶室と能舞台を備えたウィークエンドハウスを造ろうという軽い発想だったそうだが、夢が次々にふくらみ、これまでのさまざまな仕事を体系化し、ずっと構想してきた理想の建築を集積したスペースが着々と準備、実現されている。オープンの目標は来年2017年。本格的な運用はさらに翌年になるかもしれない。

 これに伴い、公益財団法人小田原文化財団を設立し、意欲的な活動をしていく方針を立てた。「〝杉本〞を出すよりもほかのことをやろうと考え、演劇的なものに深入りしていきました。3つの舞台、海に突き出ているガラスの能舞台と、伝統的な能舞台、冬至の隧道を出たところのストーンサークルの円形舞台。それらを使ってパフォーミングアーツを中心に運営していきます。100メートルのギャラリーは展示室でもあり、その独自の構造ゆえの美しさで建物自体がいわば立体作品になります」

画像: 杉本設計による「立礼茶室 うちはそと」にて PHOTOGRAPH BY YASUYUKI

杉本設計による「立礼茶室 うちはそと」にて
PHOTOGRAPH BY YASUYUKI

 古代人とわれわれ現代人が見られる同じものはあるかという設問。その答えが〈海景〉だった。悠久の時間を隔てて同じ姿を見せる海の姿をとらえた。〈劇場〉では映画一本分の時間を操った。そして今、杉本が設計した測候所は半年、一年という時間を天体に示させる。杉本を写真家、建築家とくくれないのは、写真や建築を生み出すことが目的ではなく、時間を可視化させる手段としてそれを使っているに過ぎないからである。

杉本 博司(すぎもと ひろし)
1948年東京都生まれ。大学卒業後の1970年渡米。ニューヨークと東京を拠点に現代美術、建築、日本の古典芸能のプロデュースなどで活躍。2001年、ハッセルブラッド国際写真賞受賞。2009年、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。2010年、紫綬褒章受章。2013年、フランス芸術文化勲章オフィシエを受章。作品所蔵美術館はメトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ポンピドゥー・センター(パリ)、東京国立近代美術館など多数

 

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