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画家・藤田理麻の魂の軌跡を
読みとく展覧会『Anjali』

Rima Fujita 25th Anniversary Solo Exhibition “Anjali”
夢で見たビジョンを描く画家、藤田理麻。その独特の色彩感覚とスタイルはどのように育まれたのか。画家として活動を開始して30年、新旧作が一堂に

BY OGOTO WATANABE

 下絵は描かないし、スケッチもしない。藤田理麻さんの絵を描くプロセスは独特だ。「私の場合、夢や瞑想のなかで、ビジョンとして見えたものを絵に起こしていきます。描く前に、すでに絵が見えているのです。白い表面に描いていくのではなく、黒の上に色を重ね、線を残す技法を用いています。すでにそこに存在はしているのだけれども闇の中で見えていないものに、光をあてて『命』を与えるという感覚で描いています」と、理麻さんは語る。今でこそ、この独自の技と色使いによる作品で世界中に熱烈な愛好家を持つ彼女も、ニューヨークの美大(パーソンズ・スクール・オブ・デザイン)に通っていたころは、白い表面に黒で線画ばかり描いていたという。「すると、何を描いても“整ってきれいに”描けるようになったものの、つまらなくなってしまったんです」

画像: 『アプリコット』© RIMA FUJITA 2018;ミクストメディア/紙 展覧会で展示される新作のひとつ。長年、チベット難民孤児たちの支援活動を続けてきた理麻さん。「たくさんのインスピレーションを与えてくれた北インド、特にラダック。かつて王国のあったその地で出会った可憐な少女たちが夢に出てきて、この作品になりました」

『アプリコット』© RIMA FUJITA 2018;ミクストメディア/紙
展覧会で展示される新作のひとつ。長年、チベット難民孤児たちの支援活動を続けてきた理麻さん。「たくさんのインスピレーションを与えてくれた北インド、特にラダック。かつて王国のあったその地で出会った可憐な少女たちが夢に出てきて、この作品になりました」

 当時から彼女は、不完全なものに美を感じていたという。「どうしたら整っていない線を描くことができるのだろう? と考え、黒い表面に色をのせて描くという、“逆方法”を思いついたのです。つまり、“線を残す”技法です。私の絵の黒い線は、“表紙の色”であって、描いた線の色ではないのです。描くとき、私にとっては夢の中でもうすでに存在している絵を、現実の世界でマニフェストするという感覚で作成しているので、この“黒の表面に描く”という技法は、自分にとって、とてもしっくりくる感覚がありますね」

 画家としての活動をスタートして30年。恒例の『伊勢丹新宿店アートギャラリー』での個展も、この秋で25年目を迎える。「新作のテーマは『Anjali(アンジャリ)』。サンスクリット語で、“感謝の気持ち”を表す言葉です。ここまで続けてこられたことへの感謝、私の活動を支えてくださる皆さんへの感謝。そして、宇宙や神さまというのでしょうか、人によって言葉は違うかもしれませんが、何か大きな存在への感謝の気持ちが自分の中からあふれています」

 今回は、旧作も展示されるという。「ギャラリーからぜひ、とリクエストをいただき久しぶりに引っ張り出してみたのですが、当時の生々しい力強さや若く一途な描き方に、自分の描いたものでありながら、懐かしさと同時に新鮮さを感じました。変わっていないようで、変わったんだなあとも思いました。今までのプロセスのさまざまなことがひとつになって現在があるのだと、あらためて認識できました」

 東京で生まれ兵庫県芦屋市で育ち、ティーンエイジャーのときにニューヨークへ移住。多様な人種や文化や価値観が混在するなか、ときには葛藤を抱えつつ、自身のアイデンティティを見つめてきたという。画家としての活動に平行して、2001年には、困難な状況にある国の子どもたちに絵本を創って贈る組織「ブックス・フォー・チルドレン」を設立。特にチベット難民孤児たちへの教育支援に長年、尽力してきた。会場では、作品のなかに流れる時間とともに、有形無形のさまざまな存在との出会いを通して紡がれる、ひとりの女性の魂の軌跡を見ることができるだろう。

画像: 『あなたをずっと守ります』© RIMA FUJITA 2018; ミクストメディア/紙 「動物が大好きで、ふだんからアニマルライツ(動物愛護運動)の活動もしているのですが、その中でも特に好きなのがゾウさんです。アフリカにあるゾウのサンクチュアリで保護されているゾウの里親もしています。象牙はもちろんのこと、最近はゾウの皮も高く売れるため、ゾウの密猟は絶えることがありません。日々、ゾウさんたちを守りたい、助けたい、と思っていました。ある夜に夢の中で、ゾウの赤ちゃんが鮮やかな桃色の花から顔を出しているヴィジョンを見たのです。そして『あなたをずっと守ります』とタイトルをつけました」

『あなたをずっと守ります』© RIMA FUJITA 2018; ミクストメディア/紙
「動物が大好きで、ふだんからアニマルライツ(動物愛護運動)の活動もしているのですが、その中でも特に好きなのがゾウさんです。アフリカにあるゾウのサンクチュアリで保護されているゾウの里親もしています。象牙はもちろんのこと、最近はゾウの皮も高く売れるため、ゾウの密猟は絶えることがありません。日々、ゾウさんたちを守りたい、助けたい、と思っていました。ある夜に夢の中で、ゾウの赤ちゃんが鮮やかな桃色の花から顔を出しているヴィジョンを見たのです。そして『あなたをずっと守ります』とタイトルをつけました」

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画家・藤田理麻の魂の軌跡を
読みとく展覧会『Anjali』

藤田理麻(RIMA FUJITA)
画家。ニューヨークとロサンゼルスを拠点に個展活動を続け、世界各地に熱心なコレクターをもつ。長年のチベット難民孤児たちへの支援活動により、ダライ・ラマ14世からの信頼も厚い。T JAPAN 2018年6月1日号掲載の彼女による法王への特別インタビューは、こちら

藤田理麻25周年新作絵画展『Anjali~神への感謝と捧げもの~』
会期:2018年11月7日(水)~13日(火)
会場:伊勢丹新宿店本店5階=アートギャラリー
開場時間:10:30〜20:00 ※最終日18:00終了
作家来場:会期中毎日14:00~16:00
メディテーション・セッション&サイン会:11月10日(土)14:00~15:30
ギャラリートーク&サイン会:11月11日(日)14:00~15:30
電話: 03(3352)1111(伊勢丹新宿店・大代表)

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