今回のリストは、近年、世界的に再評価を受けている日本の前衛作家、白髪一雄の個展。草間彌生の初期の作品と最新作を同時に取り上げるユニークな個展。そして、日本の近・現代アートを総観する東京都現代美術館の企画展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『白髪一雄 展』
ファーガス・マカフリー東京 

 この十数年のうちで、世界のアートマーケットを最もにぎわせた日本人といえば、1954年から72年まで活動した前衛美術グループ「具体美術協会」の作家たちだろう。白髪一雄はそのひとり。キャンバスや紙を床に置き、天井から吊るしたロープにつかまりながら足を滑らせ絵を描く「フット・ペインティング」で知られ、2014年、その作品がサザビーズのオークションにおいて5億4,590万円で落札されたことでも話題になった。

 昨年没後10年を迎え、改めて彼の画業に注目が集まるなか、東京都内では10年以上ぶりとなる個展が北青山の「ファーガス・マカフリー東京」で開かれている。会場に並ぶのは、「具体」グループが解散されたのち、80〜90年代に白髪が制作したフット・ペインティングの大作だ。

画像: 白髪一雄《破天轟》1985年 油彩、墨、和紙 210×263.5cm © THE ESTATE OF KAZUO SHIRAGA

白髪一雄《破天轟》1985年
油彩、墨、和紙 210×263.5cm
© THE ESTATE OF KAZUO SHIRAGA

画像: 白髪一雄《泥錫》1987年 油彩、和紙、板 173.5×229.5 cm © THE ESTATE OF KAZUO SHIRAGA

白髪一雄《泥錫》1987年
油彩、和紙、板 173.5×229.5 cm
© THE ESTATE OF KAZUO SHIRAGA

 作家人生の大半をフット・ペインティングに捧げた白髪だが、絵の具とそれを定着させる支持体(紙やキャンバスなど画面となるもの)を、たびたび変えている。初期の50年代半ばは、未加工で吸収性の高い紙を使用。その後の「具体」時代は、保存性の高いキャンバスを使うようになった。

 今回の個展でフォーカスされる80〜90年代の作品は、透明度の高い絵の具を併用してシミのような表現を施したものや、柔らかく淡い色調の絵の具を使ったもの。初期に立ち戻り、和紙を使った作品もある。つねに形式的な実験を重ね、新しい絵画の世界を切り開こうとした、前衛作家としての白髪の本質を伝える重要な作品群といえるだろう。

画像: 『白髪一雄 展』展示風景、2019年3月19日、ファーガス・マカフリー東京にて。写真右側の《風魔》は、1996年、白髪が72歳のときに制作されたものだ © THE ESTATE OF KAZUO SHIRAGA, COURTESY OF FERGUS McCaFFREY GALLERY PHOTOGRAPH BY RYUICHI MARUO

『白髪一雄 展』展示風景、2019年3月19日、ファーガス・マカフリー東京にて。写真右側の《風魔》は、1996年、白髪が72歳のときに制作されたものだ
© THE ESTATE OF KAZUO SHIRAGA, COURTESY OF FERGUS McCaFFREY GALLERY
PHOTOGRAPH BY RYUICHI MARUO

 ちなみに本展には、白髪が72歳のときに手がけた作品も並ぶ(じつのところ、白髪は80歳を超えてもロープを握りフット・ペインティングを実践した)。肉体を使ってパフォーマンス的に描くフット・ペインティングについて、白髪は「まるで戦場で、疲れ果て崩れ落ちるまで走り回っているかのように描きたい」と言葉を残している。その躍動をそのまま写し取ったような作品からは、晩年も果てることのなかった作家の“エネルギー”のようなものも純粋に感じられて感慨深い。

『白髪一雄 展』
会期:〜5月18日(日)
会場:ファーガス・マカフリー東京
住所:東京都港区北青山3-5-9
開廊時間:11:00〜19:00
休廊日:日・月曜、祝日(ただし4月30日〜5月4日は開廊)
電話:03(6447)2660
公式サイト

 

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