今回のリストは、アートにおける“ものの縮尺”の多様さをテーマにした企画展。朝鮮半島の豊かな生態系を守るアートプロジェクトにまつわる展覧会。そして、新鋭の切り絵作家・福井利佐の「能」をテーマにした個展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展』|横須賀美術館

“スケール”は、アート作品において特別な意味を持つ要素だ。古くから巨大な肖像画は被写体の権力の強大さを代弁し、歴史画は大きな画面に描かれることで、その物語の壮大さを表現してきた。

 とりわけ科学技術の進歩によってDNAから宇宙まで、あらゆる尺度で事象を見ることができるようなった現代においては、微視的なものから巨視的なものまで、縮尺や視点を自在に操りながら独自のイメージ世界を展開する作品は多い。作家にとって、スケールという概念そのものが表現のテーマやコンセプトになることも少なくない。

 横須賀美術館で始まった『縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール』展は、こうしたアートにおけるスケールのありよう、作家たちの“スケールの妙”を、わかりやすく体感させてくれる展覧会だ。

画像: 田中達也《しばらくここで待ってクリップ》 2018年 作家蔵

田中達也《しばらくここで待ってクリップ》 2018年 作家蔵

画像: 高田安規子・政子《豆本の山》 2013年 作家蔵 PHOTOGRAPH BY HIDETO NAGATSUKA

高田安規子・政子《豆本の山》 2013年 作家蔵
PHOTOGRAPH BY HIDETO NAGATSUKA

 11名の参加作家のひとり、田中達也は、日用品を使って奇想天外なジオラマを作り、その風景をカメラに収めるミニチュア写真家だ。彼の作品は、クリップを椅子に見立てたり、実寸大のモチーフをベースにすることで、“縮尺による遊び”をよりストレートに表現する。本展では、こういった写真作品とともに実際のジオラマも展示し、モノとイメージにおけるスケール感の不思議な差異で観るものを楽しませる。

 また鈴木康広は、日本列島(日本人ならば、東西南北が一目でわかる!)をモチーフにした方位磁石や、同じく日本列島の姿を拡大した巨大なベンチなどを展示。豆本や地図を用いた作品で知られる双子の作家、高田安規子・政子は、美術館の地・横須賀がその物語の中に登場するとされる『ガリヴァー旅行記』を題材に選び、新作をここで発表した。

 狭義のファインアートの範疇(はんちゅう)ではないが、江戸時代に日本で初めて望遠鏡を自作し、天体観測を行なった国友一貫斎も取り上げられていて面白い。自作の望遠鏡や、それを使って観察した月や太陽を描いた掛け軸が飾られ、肉眼を超えたものへの希求やスケールに対するイマジネーションが、じつはアーティストという特殊な感性の持ち主のみならず、万人にあることを気づかせる。

画像: 鈴木康広《日本列島のベンチ》 2014年 作家蔵 PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YOKOSUKA MUSEUM OF ART

鈴木康広《日本列島のベンチ》 2014年 作家蔵
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YOKOSUKA MUSEUM OF ART

『縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展』
会期:〜6月23日(日)
会場:横須賀美術館
住所:神奈川県横須賀市鴨居4-1
開廊時間:10:00〜18:00
休廊日:毎月第1月曜(ただし祝日の場合は開館)
料金:一般 ¥900、大学・高校生 ¥700、中学生以下無料
電話:046(845)1211
公式サイト

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