90年代にグラフィティ・シーンで注目を集め、世界に躍り出たKAWS。この夏、日本を訪れた彼が、対談相手に選んだのは香取慎吾だ。アートの慣習やルールに縛られず独自の表現をする、ふたりの接点

BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPHS BY KOHEY KANNO, STYLED BY TOMOKI SUKEZANE, HAIR & MAKEUP BY TATSUYA ISHIZAKI(STRIPE)

 対談が進み、初対面のふたりの緊張がほぐれたころ、KAWSはスマートフォンに保存している自身の制作風景を香取に見せた。画材会社とコラボレーションした“KAWS仕様”のアクリル絵の具があり、すべての色に番号がふられている。絵画作品を制作する際、彼はまず輪郭線を描き、塗装すべき部分にその数字を記していくという。そして、アシスタントと数字どおりに色を塗り、作品を仕上げる。

 絵の描き方に関して、香取いわく「真逆。まったく計算をしない。僕の絵を見て"香取さんらしい色ですね"と言ってくださる人もいますが、実は色は意識すらしていないかも」。暗闇の中で絵の具に手をやり、たまたま手にしたチューブで直接キャンバスに色をつけていくこともあるという。「アートスクールで絵を勉強していないからかな?」という香取に、KAWSはこう返した。「でも香取さんにとっては“誰かのやり方”“決まった絵の描き方”を知らないことが実は大事なんだと思う」

画像: アマン東京で対談した香取とKAWS。コンパニオンのフィギュアとともに (香取)プルオーバー¥116,000 マルニ表参道(マルニ) TEL. 03(3403)8660 (KAWS)すべて本人私物 SPECIAL THANKS TO AMAN TOKYO

アマン東京で対談した香取とKAWS。コンパニオンのフィギュアとともに
(香取)プルオーバー¥116,000
マルニ表参道(マルニ)
TEL. 03(3403)8660
(KAWS)すべて本人私物
SPECIAL THANKS TO AMAN TOKYO

 もうひとつ、ふたりには“真逆”なことがある。作品を販売しているかどうかだ。巨大ビジネス化しているアートの世界において、マーケットでの評価は大きな意味をもつ。実際、今年4月に開かれたオークションで、KAWSの作品が約16億4,700万円で落札され、彼への注目度は急上昇した。香取は、なぜ作品を売らないのか?「それは自分の手もとから離れてしまうのが嫌だからです」ときっぱりと言いきる。

 そしてKAWSは意外にもこう続けた。「僕も作品が欲しいという人が増えたから売るようになったけど、別に売らなくてもいいと思うんだ。実は最近は自分の作品を買い戻すこともある。グラフィティを描いていたころ、僕にとって公共の場に自分の作品があるということがハッピーだった。作品は自分が好きな場所、イメージする場所にあるのがいい。そうでなかったら、その作品を手もとに戻すのもひとつの方法だと思ってね」

画像1: KAWSと香取慎吾。
ふたりが歩くアートの地図
画像: コンパニオンにさわって遊ぶ香取とKAWS


コンパニオンにさわって遊ぶ香取とKAWS

 翌日、富士山の麓でふたりは再会した。この日は雨天のため富士山は姿を見せず、また陽がおちると周囲は霧に包まれた。しかし、ここは間違いなくKAWSが選んだコンパニオンを設置するのに最適な場所だ。長年、自身のライブの演出を手がけてきた香取も「霧の中に消えていくコンパニオンもまた魅力的ですね」と、面白がる。そして、バルーンに近づき、さわったり、揺らしたりしながら、ふたりは遊ぶように作品を楽しんだ。

 その様子を見て、前日、KAWSに尋ねた質問を思い出した。ふたりがコラボレーションしたら、どんなことができると思いますか?――「一緒にひとつの作品をつくるのではなく、絵の描き方、ルールを交換してみるのはどうだろう。香取さんは僕みたいな数学的なやり方で、僕は香取さんのように色を先に決めないで絵を描く。そういう“遊び”を楽しむのが、僕たちには合っていると思うんだ」

香取慎吾
1977年、神奈川県生まれ。歌手、俳優。美術家としても注目を集め、2018年9月、パリ・ルーヴル美術館に併設するカルーゼル・デュ・ルーヴルで初個展を開催。今年3月には、日本における初個展『サントリー オールフリー presents BOUM! BOUM! BOUM!』を開き、約40日で来場者数10万人を記録した

KAWS(カウズ)
1974年、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。90年代初めにグラフィティアーティストとして頭角を現し、"コンパニオン"や"BFF"など独自のキャラクターを取り入れた作品で世界的に人気を博す。近年はディオールやユニクロ UTなどファッションブランドとのコラボレーションも手がける

 

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