今回のリストは、現代美術家イズマイル・バリーの個展。女性写真家の草分け的存在、山沢栄子の回顧展。そして、ゴッホの画家としての軌跡をつまびらかにする企画展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『ゴッホ』展|上野の森美術館

 フィンセント・ファン・ゴッホが本格的に画家を目指したのは、27歳のとき。37歳で死去するわけだから、画家として活動したのはわずか10年間ということになる。しかも、それまではミレーの作品を模写したり、指南書で絵の描き方を独学しただけで、実践的な絵画のトレーニングをまったく受けていなかったという。では、その短い期間で、ゴッホはどのように独自の画風を確立していったのか。東京・上野の森美術館で開かれている『ゴッホ』展は、その軌跡をつまびらかにする。

画像: フィンセント・ファン・ゴッホ《疲れ果てて》1881年9-10月 鉛筆・ペン・インク・筆・不透明水彩、簀の目紙 23.4×31.2cm P. & N. デ・ブール財団 © P. & N. DE BOER FOUNDATION

フィンセント・ファン・ゴッホ《疲れ果てて》1881年9-10月
鉛筆・ペン・インク・筆・不透明水彩、簀の目紙 23.4×31.2cm P. & N. デ・ブール財団
© P. & N. DE BOER FOUNDATION

 展覧会の軸になるのは、ゴッホの画風を変えた2つの出会いだ。ひとつは「ハーグ派」。これは、19世紀後半、オランダの都市ハーグを拠点にした写実主義の画家たちの集まりで、農民やその暮らし、オランダならではの風景を画題とし、当時国際的に評価されていた。ゴッホは、画家を目指した翌年、いとこの夫であった画家で、ハーグ派の主要メンバーであったアントン・マウフェに師事。そこで、被写体を見ながら絵を描くことを学び、水彩画や油絵の技法を習得する。

画像: アントン・マウフェ《4頭の曳き馬》 制作年不詳 油彩、板 19.5×32cm ハーグ美術館 © KUNSTMUSEUM DEN HAAG

アントン・マウフェ《4頭の曳き馬》 制作年不詳 
油彩、板 19.5×32cm ハーグ美術館
© KUNSTMUSEUM DEN HAAG

 もうひとつは「印象派」との出合いだ。1886年、ゴッホは、パリに住む弟テオの家に転がり込む。当時テオは、印象派の作品を扱う大手画廊「グーピル商会」の画商であり、ゴッホはテオを介して、印象派の流れを組む作家たちと交流を深めていく。モネが風景画で実践した画法を、人物画に応用することを試みたり、また、ゴーギャンや点描で知られるスーラなどポスト印象派の画家たちとともにカンヴァスを並べて絵を描いた。ゴッホの絵は、ハーグ時代の暗い土色をメインとした作風から、ダイナミックな色彩溢れるものへと変化していく。そして、印象派的な表現のモノマネを超えて、《ひまわり》や《薔薇》《糸杉》のような作品が生まれていくわけだ。

画像: フィンセント・ファン・ゴッホ《薔薇》 1890年5月 油彩、カンヴァス 71×90cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー © NATIONAL GALLERY OF ART, WASHINGTON GIFT OF PAMELA HARRIMAN IN MEMORY OF W. AVERELL HARRIMAN

フィンセント・ファン・ゴッホ《薔薇》 1890年5月
油彩、カンヴァス 71×90cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー
© NATIONAL GALLERY OF ART, WASHINGTON GIFT OF PAMELA HARRIMAN IN MEMORY OF W. AVERELL HARRIMAN

 本展では、ゴッホの各時代の作品と並べて、ハーグ派、印象派の画家たちの名作を展示。また、弟テオにあてた手紙の一節も紹介する。ゴッホはいかにしてゴッホになったのかーー。この展覧会は、稀代の画家の、誰もが興味を持つだろう側面をドラマティックに伝える。

画像: フィンセント・ファン・ゴッホ《糸杉》 1889年6月 油彩、カンヴァス 93.4×74cm メトロポリタン美術館 MAGE COPYRIGHT: © THE METROPOLITAN MUSEUM OF ART. IMAGE SOURCE: ART RESOURCE, NY

フィンセント・ファン・ゴッホ《糸杉》 1889年6月
油彩、カンヴァス 93.4×74cm メトロポリタン美術館
MAGE COPYRIGHT: © THE METROPOLITAN MUSEUM OF ART. IMAGE SOURCE: ART RESOURCE, NY

『ゴッホ』展
会期:〜2020年1月13日(月)
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
開館時間:9:30~17:00(金・土曜は~20:00)
※入場は閉館30分前まで
休館日:12月31日(火)、2020年1月1日(水・祝)
料金:一般¥1,800、大学・専門学校・高校生¥1,600、中学・小学生¥1,000
電話:03(5777)8600(ハローダイヤル)
※本展は1月25日(土)〜3月29日(日)の期間で、兵庫県立美術館にも巡回
公式サイト

 

This article is a sponsored article by
''.