日本では知るひとぞ知る風景画の第一人者、吉田博の木版画を一堂に集めた展覧会から、北大路魯山人の器と素朴派の企画展、また注目の新人画家、シュ・ニン(許寧)の初個展まで。開催中の3つのアート展の見どころを紹介する

BY MASANOBU MATSUMOTO

『没後70年 吉田博展』|東京都美術館

「絵の鬼」「早描きの天才」そして「(日本美術界の権威)黒田清輝を殴った男」―― 明治から昭和にかけて多彩な風景画を残した画家・吉田博には、いくつもの異名がある。国内では広く紹介されてこなかった吉田だが、欧米では何度も展覧会が開かれ、コレクターも多い。「ダイアナ妃や精神科医フロイトが愛した画家」、これも吉田のもうひとつの異名だ。

画像: (写真左)《瀬戸内海集 光る海》大正15(1926)年 木版、紙 37.2×24.7cm (写真右)《上野公園》昭和13(1938)年 木版、紙 37.6×24.8cm

(写真左)《瀬戸内海集 光る海》大正15(1926)年 木版、紙 37.2×24.7cm
(写真右)《上野公園》昭和13(1938)年 木版、紙 37.6×24.8cm

 東京都美術館で開催中の『没後70年 吉田博展』では、特に彼の集大成である「木版画」にフォーカスし、その画業を振り返る。

 とりわけアメリカにて水彩画で高い評価を得た吉田は、40代になってから木版画の制作をスタートする。また吉田には美術マーケットを読むセンスにも長けていたようだ。江戸時代晩期から海外でも広く知られていた浮世絵版画。吉田はそこに西洋の写実描写や色彩表現を取り入れ、浮世絵版画には見られなかった光の情景や季節の移ろいを繊細なグラデーションで表現し、新しい版画制作に挑戦した。

画像: 《印度と東南アジア タジマハルの朝霧 第五》昭和7(1932)年 木版、紙 36.2×51.0cm PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YOSHIDA HIROSHI: COMMEMORATING THE 70TH ANNIVERSARY OF HIS DEATH

《印度と東南アジア タジマハルの朝霧 第五》昭和7(1932)年 木版、紙 36.2×51.0cm
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YOSHIDA HIROSHI: COMMEMORATING THE 70TH ANNIVERSARY OF HIS DEATH

 実際に、通常の浮世絵版画は、色を替えながら10回ほど摺り重ねて仕上げられるが、吉田の作品の場合は平均30回、多いもので96回を数えるという。展示会場でも、これが版画だとは信じがたい、多彩で精密、情緒豊かな作品が並ぶ。吉田が、世界各地を渡り歩きながら記した写生帖も公開。「絵の鬼」という吉田の異名が間違いでないことが実によくわかる。

『没後70年 吉田博展』
会期:~3月28日(日)※会期中、一部展示替えあり
会場:東京都美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園8-36
開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜
料金:一般¥1,600、大学・専門学校生¥1,300、高校生¥800、65歳以上¥1,000、中学生以下無料
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
公式サイト

※ 新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報は公式サイトを確認ください

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