パンデミックや戦争の脅威、不安定な経済状況など、世界情勢は目まぐるしく変化し続け、私たちは日々、不安を拭えない時代を生きている。そんな中、常に希望とともに前を向き、活動するクリエイターも少なくない。日本人現代アーティストのSHUN SUDOもその1人だ

BY RIE KAMOI, PHOTOGRAPHS BY KAZUSHI TOYOTA

 SHUN SUDOは1977年東京生まれ。世界を旅しながら独学でアートに取り組み、感性を磨いてきた。2015年、拠点を置いていたアメリカ・ニューヨークでソロ展覧会を開催しデビュー。以降、次々と発表の場を広げ、最近ではソニーやアップル、ナイキ、ポルシェなどと協業する他、2021年に「東京2020オリンピック」のスケートボード会場の壁画を手掛け、2022年には栗原たおのブランド「タオ」とコラボレーションし話題となった。新時代を切り開く、日本を代表するアーティストとしてさまざまな業界から注目を集める人物である。

画像: 現代アーティスト、SHUN SUDO

現代アーティスト、SHUN SUDO

 SUDOは現在、自身初の大規模展覧会「ART LAND」を青山のスパイラルで開催している。同展では、自身最大となる横幅3mの大型キャンバスを彩った作品、文字やモチーフを切り抜いたシェイプドキャンバスの作品など、約20の新作をそろえたほか、大胆にアートでラッピングしたポルシェの「タイカン」やクマ型ブロックタイプフィギュアの「ベアブリック」なども展示。版画の上にシルクスクリーンで描いた迫力ある作品も目を引き、多くの来場者を楽しませている。

画像1: 展覧会「ART LAND」にて

展覧会「ART LAND」にて

画像: 展覧会「ART LAND」にて。キャンバス画を「ベアブリック」にプリント

展覧会「ART LAND」にて。キャンバス画を「ベアブリック」にプリント

 そんなSUDOを象徴するアイコンの一つが、中心に四つの小さな穴を描いた“ボタンフラワー”だ。「二つの布地をつなげるボタンのように、人と人の心もつなげたい」という思いから誕生したという。「最初は花がボタンになっていたら面白いな、顔のようで楽しいなというくらいの気持ちで描き始めたと記憶している。でも、何度か描いているうちに、ボタンとは2枚の布を一つにつなげるためのものだということに気づいた。僕は自分の絵を通して、誰かと誰かが笑顔で語り合ったり、仲良くなったりしたらいいなと思っている。そんなグッドコミュニケーションの象徴として、“ボタンフラワー”を描き始め、自分自身でも愛着が湧いてきた」

画像2: 展覧会「ART LAND」にて

展覧会「ART LAND」にて

画像3: 展覧会「ART LAND」にて

展覧会「ART LAND」にて

 独自のタッチで描かれた唯一無二のモチーフは躍動感にあふれ、さまざまな色合いが生命力を表現する。インパクトあるカラーリングについて、「ブルーやグリーンも好きだが、今回は明るめの暖色系を多く取り入れた。特にレッド。血を連想させるようなエネルギーを表現したかった」と話す。

 SUDOの作品には、新型コロナウイルスに対する思いやウクライナ戦争への疑問など、社会情勢を反映したアイデアやデザインが秘められたものもある。「現実世界を生きる1人として、世界や社会の情勢が作品に影響を与えることはある。ただし、アートは観ていて楽しいものであってほしい。誰もが笑顔になれるような作品を描き、観た人がそれを素直に楽しむ世界であること。それが僕の一番の願いだ」

画像: 展覧会「ART LAND」にて。「タオ」に提供したキャンバス作品(上)と商品化されたスカーフ(下)

展覧会「ART LAND」にて。「タオ」に提供したキャンバス作品(上)と商品化されたスカーフ(下)

画像: 展覧会「ART LAND」にて。「タオ」に提供したアートのテーマは「東京」。中心には東京タワーが描かれている

展覧会「ART LAND」にて。「タオ」に提供したアートのテーマは「東京」。中心には東京タワーが描かれている

 数々の企業やブランドと協業を重ねた中でも、SUDOが特に印象に残っていると語るのが、「タオ」2023年春夏コレクションでのコラボレーションだ。自身も好きだというファッションとの新たな出合いは大きな刺激があったという。「デザイナーの栗原さんと直接コミュニケーションをとりながら、彼女の服作りに対する熱い思いやこだわり、僕の作品に対するリスペクトを感じることができた。平面の作品が服に落とし込まれ、新たな形に生まれ変わる。服をショーで見たときは、自分でもよくわからないくらい感動し、涙がこぼれそうになった」。“東京”をテーマに、東京タワーとボタンフラワーを描いた作品はTシャツやスカーフに配された。

画像: 展覧会「ART LAND」にて。会場奥には来場者参加型の巨大キャンバスが設置された

展覧会「ART LAND」にて。会場奥には来場者参加型の巨大キャンバスが設置された

 SUDOが絵を描く原点であり、今回の展覧会「ART LAND」のコンセプトにも掲げたのは、”無邪気にアートを楽しむ”ことだ。会場には、来場者が誰でも自由に絵を描ける大きなキャンバスを設置。「アートってなんだろう?みたいな小難しいことは考えず、落書きやお絵かきの感覚で、僕の作品を観て、自分で描いて、アートというものを楽しんでほしい」。

 SUDOのアートに対する発想は、そうした距離感のない気軽なアプローチから生まれる。だから老若男女、国籍も問うことなく見る者を魅了しているのだ。

 最後に、“ボタンフラワー”のようなアイコニックなモチーフを描き続けることに難しさはないのか聞いた。「基本的には、描きたいものを描くことを続けてきたし、これからもそのつもりだ。この何年かは“ボタンフラワー”をたくさん描いてきたけれど、描き続けなければならないとも考えていない。僕の目標は、生涯絵を描き続けること。そのために何が必要で、何が足りないのか、純粋に絵を楽しむことを目的とした今回の展覧会を通してヒントを見つけられたらと思っている」。

『ART LAND』SHUN SUDO
会期:~1月24日(火)
会場:スパイラルガーデン
住所:東京都港区南青山5-6-23 スパイラル1F
開場時間:11:00〜20:00
入場料/無料
公式サイトはこちら

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