TEXT AND PHOTOGRAPHS BY NAMI IKUMA
大人の女性の薄毛悩みは聞かせてもらうことが多い。「頭頂の髪がペタンとする」「分け目が目立つ」「髪が細く少なくなってきた」……など、切実な問題だ。しかし、年齢だからと諦めるのは早い。髪は毎日新しく作られるものなので、生活習慣やホームケアなど、意識の持ち方次第で、いい状態をキープすることは思うよりずっと簡単だ。まずは薄毛のメカニズムとその基本的な対策を知っておこう。
ヘアサイクルの乱れが薄毛を引き起こす
髪には1本1本に寿命があり、古い髪がその一生を終えて抜け落ちるとまた新しい髪が同じ毛根から生えてくる。その生まれ変わりの循環を「ヘアサイクル」という。このヘアサイクルの乱れが、薄毛や細毛を引き起こす原因といわれる。
【健やかな髪を育む「ヘアサイクル」とは?】
①髪が生まれる「新生期」に始まり
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②髪が太くしっかりと成長する「成長期」(3〜5年)
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③成長が止まり、毛根が頭皮の浅いところに移動していく「退行期」(2〜3週間)
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④古い髪が脱毛する「休止期」と同時に、その下で新しい髪が作られる「新生期」が始まる(2〜3カ月)
ヘアサイクルの乱れは、女性ホルモンの減少をはじめ、血行不良、栄養不足などの要因が考えられるが、このヘアサイクルの乱れ方は男女で異なる。男性の場合は「成長期」が短くなり、髪が十分に成長しないうちに「退行期」に入ってしまうのに対し、女性の場合は古い髪が抜けてから新しい髪が生えるまでの「休止期」が伸びるパターンが多く、本数自体が減ってしまうとされている。
さらに更年期以降は女性ホルモンが減少していくため、相対的に男性ホルモンの比率が上がり、男性と女性の両方のパターンを併発してしまう場合もある。
異常な脱毛は数カ月前にきっかけがあるかも!?
また近年、急激な脱毛は、自己免疫系のトラブルによるものとされている。これはストレスや風邪などをきっかけに、本来なら外敵を攻撃するはずの自己免疫細胞が正常な細胞を間違って攻撃してしまい、脱毛を招くというもの。
急に髪が薄くなったり、円形脱毛が疑われるような場合は、3〜4カ月前に大きなストレスはなかったか、体調不良を起こさなかったか思い出してみて。頭皮環境を整えて自然治癒を待つのもありだが、気になる場合は皮膚科医に相談してみよう。
薄毛もフケもペタンコにも有効な、頭皮環境ケア
薄毛対策といえば、「さあ、育毛剤!」と、先走りがちだが、その前にまずは受け入れやすい土壌を作ることが大切。頭皮にベタつき、あるいは逆に乾燥を感じることはないだろうか? 頭皮の正中線のあたりの皮脂量は顔のTゾーンの2倍とされ、油分と水分のバランスが乱れやすく、普段のシャンプーでは落としきれない汚れが毛穴などにたまりがち。
酸化した皮脂や古い角質は長く残留するほど落としにくくなるので、週に1〜2度、頭皮と毛穴のディープクレンズをして、健康な頭皮環境を作ろう。育毛剤が浸透しやすいだけでなく、根元の立ち上がりがよくなる上に、フケやかゆみ、においなどの対策としても有効。顔の肌でもときどき角質ケアをするように、頭皮もぜひ定期的なディープクレンズを習慣にしていこう。
伊熊奈美直伝!おすすめプロダクト別、薄毛ケアのHow To
シャンプー前のオイルでマッサージ
頭皮の角質ケアの基本は、シャンプー前のオイルマッサージ。髪の絡まりをブラシでといた後、手のひらにオイルをまんべんなく広げ、指先に軽く圧をかけながら、下から頭頂に向かってギザギザを描くようになじませよう。特に皮脂の多い生えぎわや頭頂はしっかりなじませて。湯船で温まるなどしながら、15〜20分くらい放置した後、シャンプーをスタート。ホホバオイルのほか、植物系のオイルは仮に頭皮に残っても問題ないけれど、気になる場合は、シャンプー2回で仕上げればすっきり。
さらにお手軽に頭皮ケアできるディープクレンズ
オイルマッサージはどうにも面倒で…...という人には、時短でできる頭皮のディープクレンズ剤を取り入れるのもおすすめ。泡立たないクリームタイプで、ふだんのシャンプーと同じように使うだけで、毛穴の汚れをしっかり落とてくれる。1本で頭皮ケア、シャンプー、トリートメントができるオールインワンタイプが多いので、最近人気が急上昇。
直接働きかける薄毛ケアは持続可能なものを
頭皮環境が整い受け入れる環境ができたら、育毛剤や頭皮用セラムなどで、髪を太く強く育てる働きかけを。夜の洗髪後と朝のブラッシング時、朝シャン派なら、シャンプー後と夜寝る前など、1日2回は取り入れたい。
種別としては、頭皮環境を健やかに保つための化粧品、薬用成分を配合した育毛剤(医薬部外品)だけでなく、深刻な悩みがあるなら治療を目的とする医薬品もある。いずれを選ぶとしても、継続することが悩み解消のカギ。質感や香りの好み、価格など、自分にとって継続可能なものを自分で選ぼう。
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