先ごろ両国国技館で開催された、フェラーリ70周年記念イベント。フェラーリ・ジャパン&コリア代表取締役社長、リノ・デパオリ氏が、日本でフェラーリがかくも愛される理由、そしてフェラーリが目指すべき未来を語った

BY TAKESHI SATO

画像: 日本での初お披露目となった「ラフェラーリ・アペルタ」。排気量6262ccのV型12気筒エンジンと電気モーターを搭載するハイブリッド車で、最高出力は963馬力、最高速度は350km/h。生産予定台数の210台(うち1台はチャリティオークションに出品)はすでに完売。新車時の価格は約170万ユーロ

日本での初お披露目となった「ラフェラーリ・アペルタ」。排気量6262ccのV型12気筒エンジンと電気モーターを搭載するハイブリッド車で、最高出力は963馬力、最高速度は350km/h。生産予定台数の210台(うち1台はチャリティオークションに出品)はすでに完売。新車時の価格は約170万ユーロ
 

 道行く人が、怪訝な表情を浮かべて立ち止まった。事情を知らない人が不思議に思うのも当然だろう。両国国技館の前に、何十台ものフェラーリが飾られていたからだ。両国国技館におけるイタリア製スーパーカーは、「解剖台の上でのミシンとこうもり傘の出会いのように美しい」という19世紀の詩人の言葉を思い起こすくらい、意外な組み合わせだ。

 両国国技館にフェラーリが展示されたのは、このブランドの70周年を祝うためだ。1947年に最初の1台のテストドライブが行われてから70年めにあたる今年、フェラーリは世界各地で記念イベントを開催してきた。そして「Driven By Emotion」と名付けられたこのイベントが、このほど日本にやって来たのだ。主催者としてイベントのオープニングで登壇したフェラーリ・ジャパン&コリアのリノ・デパオリ代表取締役社長は、両国国技館を日本の会場に選んだ理由を次のように語った。

「私は幸運にも9月場所をここ両国国技館で観ることができ、相撲という伝統的な文化に触れました。相撲からパワーを感じると同時に、力士たちが卓越した技術と経験を備えていることを理解したのです。フェラーリは、この価値を共有したいと思っています。そして、神聖なこの場所を使わせていただくことに感謝いたします」

画像1: 1947年3月12日、エンツォ・フェラーリが手がけた第1号車「フェラーリ 125S」のテストが行われた。その日から数えて、今年が70年めとなる vimeo.com

1947年3月12日、エンツォ・フェラーリが手がけた第1号車「フェラーリ 125S」のテストが行われた。その日から数えて、今年が70年めとなる

vimeo.com
 

 イベントでは70周年記念モデルの「ラフェラーリ・アペルタ」がお披露目された。ちなみにアペルタとはイタリア語で「開放」の意で、オープンモデルになる。アンヴェールされると、そのドラマティックなデザインに熱い視線が集まり、無数のフラッシュが焚かれた。イベント終了後は、前出のデパオリ氏にインタビューする機会を得た。おすすめの認定中古車から日本市場の分析に至るまで、氏はわれわれの質問に気さくに答えてくれた。

画像: フェラーリ・ジャパン&コリアのリノ・デパオリ代表取締役社長。カナダのブリティッシュコロンビア大学商学部で学士号を取得した後、大手一般消費財企業数社にて営業、マーケティング、組織管理の経験を積む。8年前にフェラーリに入社。中東、アフリカ、英国、中国を担当した後、2014年に日本へ着任。2015年より韓国も担当している

フェラーリ・ジャパン&コリアのリノ・デパオリ代表取締役社長。カナダのブリティッシュコロンビア大学商学部で学士号を取得した後、大手一般消費財企業数社にて営業、マーケティング、組織管理の経験を積む。8年前にフェラーリに入社。中東、アフリカ、英国、中国を担当した後、2014年に日本へ着任。2015年より韓国も担当している
 

フェラーリがいまどんなモデルを生産しているのかを読者に伝えたいと思います。現在のラインナップを代表する「フェラーリ GTC4Lusso」と「フェラーリ 488 GTB」がどんな車種かを、デパオリさんの言葉で解説してください。

リノ・デパオリ氏(以下D):
まず「GTC4Lusso」は、4人の大人が快適に過ごすことができるほど室内空間に余裕があり、荷室も広いモデルです。以前のフェラーリでは想像できなかった、友人や家族と週末を過ごすためのGT(グランド・ツーリング)モデルで、新しい顧客がつきました。家族や友人とフェラーリのエモーションを共有するというのは、かつてのモデルでは体験できなかったことです。

「フェラーリ 488 GTB」は、もっとピュアなスポーツカーですね。

D:そうです。ドライバーに感銘を与える運動性能を備えたスポーツカーで、サーキット走行を楽しまれるような方にもご満足いただけるモデルです。

認定中古車の制度が充実したことで、大富豪でなくてもフェラーリを楽しめるようになりました。初めてフェラーリを購入する方が認定中古車から選ぶとして、一番のお薦めはどんなモデルでしょうか?

D:難しい質問ですが、私なら「フェラーリ California T」をリコメンドします。リトラクタブルハードトップを備えているので、天気が良い日に屋根を開けて箱根や葉山をドライブしていただきたいですね。非常に柔軟性に富んだモデルなので、ゴルフに使っていただくのもいい。ひとつ申し上げたいのは、2011年7月以降に販売したモデルについては7年間の保証が付き、保守点検が無料となっていることです。オーナーが変わっても保証は適用されるので、維持費が心配でフェラーリの購入をためらっていた方には、この制度の存在を知っていただきたいと思っています。

画像: スポーツカーのマニアだけでなく、フェラーリの間口を広める役を担う「GTC4Lusso」。タイトなスポーツカーではなく、大人4名と荷物を搭載できるGTカー。排気量6.2リットルのV型12気筒エンジンは最高出力690馬力を発生。 車両本体価格 ¥32,129,630 PHOTOGRAPHS: COURTESY OF FERRARI JAPAN

スポーツカーのマニアだけでなく、フェラーリの間口を広める役を担う「GTC4Lusso」。タイトなスポーツカーではなく、大人4名と荷物を搭載できるGTカー。排気量6.2リットルのV型12気筒エンジンは最高出力690馬力を発生。
車両本体価格 ¥32,129,630
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF FERRARI JAPAN
 

2016年の日本のスーパーカー市場を見ると、1位がフェラーリで年間販売台数が678台、以下ランボルギーニ382台、アストンマーチン186台、マクラーレン179台と続きます。イギリス、中東、中国などを経験したデパオリさんは、日本市場をどのように分析されますか?

D:日本市場の特徴は、フェラーリのブランド力が他の国よりも強力だということです。それはおそらく、モータースポーツ文化が根付いているからだと考えています。フェラーリとF1に代表されるモータースポーツの関係があるからこそ、日本でリーダーの地位を確保できているのでしょう。もうひとつ、じつは2014年に日本へ赴任した時には、市場が拡大するという期待はそれほど持っていませんでした。なぜなら、日本はすでに成熟した市場だと考えていたからです。ところが、2012年のスーパーカー市場の年間販売台数は1000台規模だったのに対して、2016年には2000台にまで拡大しています。短期間にこれだけ成長しているのは、他の市場とは明らかに異なるユニークな特徴です。

2016年の数字を見ると、わずかですが中国より日本のほうがフェラーリの販売台数が多い。これはどのように分析されますか?

D:私は日本に来る前には中国にいましたが、どの自動車メーカーも中国における販売を拡大するという野心を持っています。そして多くのメーカーがシェアを伸ばすために巨額の投資をしている。けれどもフェラーリの考え方は違います。フェラーリは長期にわたって自分たちの価値を高め、私どもの文化を根付かせるために投資をしています。日本では既にその文化、価値を十分ご理解いただいていますが、中国はまだその途上にあります。とはいえ、落ち込んでいる中国のスーパーカー市場の中で、フェラーリは健闘しています。これは長期的な視野での戦略が功を奏していることの証明でしょう。

フェラーリの魅力のひとつが、官能的なサウンドを奏でるエンジンです。ところが英仏政府が相次いで2040年までにエンジン車の新車販売を禁ずると発表しました。モーターでクルマが走る時代を、フェラーリはどのように考えているのでしょうか。

D:排出ガスや燃費の規制が年々厳しくなっていますが、これはいいことだと考えています。フェラーリは自動車メーカーとしてルールを遵守し、ターボを使うなどしてパワーを上げつつ燃費も向上させています。そしてフェラーリのエンジンは、優れたエンジン技術に与えられる「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」を2年続けて受賞しました。フェラーリの哲学や価値観を崩すことなく、規制に対応しているのです。モーターでクルマが動く電動化についても同様です。たとえば現在のF1はハイブリッド車ですが、F1で磨いたハイブリッド技術が本日発表したラフェラーリにも採用されています。しかもハイブリッド化によって、よりパワフルで楽しいクルマになっているのです。

クルマを語るにあたっては、電動化と並んで自動運転も今日的なテーマです。フェラーリは、自動運転をどのように考えているのでしょう?

D:電動化と異なり、自動運転は難しいテーマです。「Driven By Emotion」がテーマになっているように、エモーショナルな体験をしていただくのがフェラーリ。仮に全自動化になった時にエモーションが感じられるのか。個人的には、自動化によってエモーションやスピリットはなくなると考えています。

最後に、デパオリさんの日本という国に対する印象をお聞かせください。

D:日本で仕事をする前の話になりますが、私の新婚旅行は日本で、素晴らしく美しい国だと感動しました。昨年のクリスマスも、私と妻の家族を日本に集めて、スキー場で過ごしたんですよ。日本に暮らし、ここで仕事ができることは私にとって実にハッピーです。

  

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フェラーリ・ジャパン
TEL. 03(6890)6200
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