世界の建築界の最高峰に立つ女性、妹島和世。軽やかなガラスの建築で世界を驚かせた彼女は、さらに進化し、新たな領域を目指す

BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI HOMMA

最新作「荘銀タクト鶴岡」は
より複雑でおおらかな建築に

 9月末、妹島は山形県鶴岡市にいた。SANAAの最新プロジェクトである「荘銀タクト鶴岡」(鶴岡市文化会館)の竣工記念式典に出席するためだ。最終チェックのため、妹島は式典前日に朝一番の飛行機で鶴岡入りした。午後に会場を訪れてみると、スタッフとともにガラス壁に取りつけられたパステルカラーのカーテンの開け閉めを調整していた。

「夜になると真っ暗になるので、ちょっと色があったほうがいいと思ってパステルカラーのカーテンを設置しました。でも隣の敷地にある致道館を見せたいので、その見え方を調整していたんです。致道館や庭が、別の視点から見えるようになって好評だと聞きました。以前は、文化会館の敷地と致道館の庭にはフェンスの塀があったのですが、せっかくなので塀をとることを提案したら、市役所が文化庁に交渉し許可を取ってくださいました」

「荘銀タクト鶴岡」は、客席数1,120席の大ホールを中心とした鶴岡市の文化芸術活動の拠点。大ホールを取り囲むように通路があり、通路沿いには小ホール、練習室、楽屋が設置されている。外観は山々に囲まれた鶴岡の風土を生かし、山並みと重ならないよういくつもの小さな屋根が重なった形となっており、その形状は山の稜線の延長とも、隣接する国指定史跡の「庄内藩校 致道館」の屋根と呼応するようにも見える。一カ所として同じ形のない建物は、シンプルな建造物の多いSANAAとしては珍しい。

「以前は、この場所にはこの形が合う、と考えて単純な丸や四角を採用することが多かったですが、今はここは道路、ここは致道館、ここは裏の家、というように、より周囲の環境に溶け込めるようにすることを試みているので、外観がより複雑になっています。内部空間と外部空間の関係を考えてみても同じで、以前だったら外観はシンプルなボリュームにしていたところを、ここでは大ホールの部分は高さが必要だから外観もそのまま高くして、低い部分との差を見せるなど、内部のさまざまな要素をそのまま外側に反映させています」

画像: 「荘銀タクト鶴岡」の竣工記念式典では、ホワイエに設計時のスタディも展示された。ひとつの建物を創るために、100個以上のスタディが創られる

「荘銀タクト鶴岡」の竣工記念式典では、ホワイエに設計時のスタディも展示された。ひとつの建物を創るために、100個以上のスタディが創られる

画像: 山並みに呼応する外観美しい山々に囲まれた庄内平野にある鶴岡市。「荘銀タクト鶴岡」の外観も、山の稜線と重なることを避けてデザインされている。緩やかなカーブをなす屋根部分には地元の職人が手作業で作った板金が用いられている

山並みに呼応する外観美しい山々に囲まれた庄内平野にある鶴岡市。「荘銀タクト鶴岡」の外観も、山の稜線と重なることを避けてデザインされている。緩やかなカーブをなす屋根部分には地元の職人が手作業で作った板金が用いられている

画像: 大ホールで行われていた地元高校の吹奏楽部のリハーサル。ホールの客席は、ステージと遠くならないようワインヤード(ぶどう畑)形式に。音が集まるように、手摺壁が反響板となっている

大ホールで行われていた地元高校の吹奏楽部のリハーサル。ホールの客席は、ステージと遠くならないようワインヤード(ぶどう畑)形式に。音が集まるように、手摺壁が反響板となっている

 

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