世界の建築界の最高峰に立つ女性、妹島和世。軽やかなガラスの建築で世界を驚かせた彼女は、さらに進化し、新たな領域を目指す

BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI HOMMA

自分の建築は、環境をつくる
1ピースでいい

「おおらか」という言葉は、現在の妹島を語るうえでのキーワードかもしれない。建築家として独立してから30年。建築に対する考え方にも変化が生まれてきた。

「内部空間と外部空間をつなげたいとずっと考えてきました。それは変わりませんが、さらに、その周りに広がる空間、"環境" に自分たちの創るものがどうつながってゆけるかを考えています。建築自体も環境をつくる1ピースです。現在、瀬戸内海の犬島では、民家をリノベーションしたりして、ギャラリーを作る「家プロジェクト」をやらせていただいていますが、自分の建築がどうというより島全体の一要素になればいいと考えています。

社会が複雑化し、建築家に求められる能力も広がってゆくなか、どういう建築が望ましいのか、正直答えは見つかっていません。さまざまな専門家や違う分野の人とコラボレーションするのがいいのか、各専門家がそれぞれ、いろいろなところでやるのがいいのか。ひとつ、自分のなかで確かなのは、建築が単体としてどうか、ということより、街のなかでどうあるべきかに興味があるということです。建築自体もオーソドックスに見えるような、風景的なものができればいい。あるいは恐ろしく新しく建築を捉え直すことができたら」

画像: 2004年開館の「金沢21世紀美術館」 © SANAA

2004年開館の「金沢21世紀美術館」
© SANAA

画像: ベネッセアートサイト直島の犬島のプロジェクトは、妹島事務所が手がけている。最新作は、ガーデナーの「明るい部屋」との共同プロジェクトで、長く使われていなかったガラスハウスを再生し、庭園・植物園として蘇らせる「犬島 くらしの植物園」(2016年) © KAZUYO SEJIMA & ASSOCIATES

ベネッセアートサイト直島の犬島のプロジェクトは、妹島事務所が手がけている。最新作は、ガーデナーの「明るい部屋」との共同プロジェクトで、長く使われていなかったガラスハウスを再生し、庭園・植物園として蘇らせる「犬島 くらしの植物園」(2016年)
© KAZUYO SEJIMA & ASSOCIATES

画像: 妹島事務所の最新作は東京・墨田区にある「すみだ北斎美術館」(2016年) © KAZUYO SEJIMA & ASSOCIATES

妹島事務所の最新作は東京・墨田区にある「すみだ北斎美術館」(2016年)
© KAZUYO SEJIMA & ASSOCIATES

画像: ルーヴル美術館の別館として、フランスのランスに建てられた「ルーヴル・ランス」(SANAA設計、2012年)。この建物もまた地方再生の役割を担う © KAZUYO SEJIMA + RYUE NISHIZAWA / SANAA, TIM CULBERT + CELIA IMREY / IMREY CULBERT, CATHERINE MOSBACH

ルーヴル美術館の別館として、フランスのランスに建てられた「ルーヴル・ランス」(SANAA設計、2012年)。この建物もまた地方再生の役割を担う
© KAZUYO SEJIMA + RYUE NISHIZAWA / SANAA, TIM CULBERT + CELIA IMREY / IMREY CULBERT, CATHERINE MOSBACH

 風景に溶け込むような建築とまったく新しい建築。相反する建築像が妹島のなかには共存する。最近興味のあることはと問いかけると、「料理」という答えが返ってきた。「以前はおいしいかどうかはどうでもよかったけれど、今は作るのも食べるのも楽しい。いろいろな面白いことがあるし、それが見えてくるようになりました。前よりおおらかになったのかもしれません。絶対こうというのはない」

 世界で最も注目と尊敬を集める女性建築家は、こうして軽々と既成概念を超え、新しい建築を目指してゆく。

荘銀タクト鶴岡
2018年3月30日まで平日(年末年始休)に限りエントランスホールを一般開放中
公式サイト

 

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