京都の北、昔ながらの住宅街に建つNISHINOYAMA HOUSE。妹島和世が設計したこの集合住宅には不思議なコミュニティが存在する。国籍も世代も家族構成も異なる住人たちのあいだで自然に育まれていった人々のつながりとは?

BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY GION

 設計段階でポイントになったのは屋根のデザインだった。京都の景観条例では、住宅は勾配屋根にしなければならない。モダンな集合住宅で伝統的な日本家屋に見られる勾配屋根をどうデザインするか。試行錯誤を重ねた結果、ひとつの大きな屋根を、敷地の周囲にある住宅の屋根と似た大きさの21枚の屋根に分割し、全体でひとつの勾配屋根として見立てるというプランが生まれた。各住居は約2.5枚の屋根を持ち、そのうち1枚は隣と共有する。共有する屋根の下には隣家の庭やテラスが入ることになり、結果としてシームレスな空間ができあがった。元住人で映像作家のクリスチャン・メルリオは西野山をテーマとした映像作品を作成しているが、その中で妹島は「10軒の家を10個つくるという形にはしたくありませんでした。全体でひとつにしたいという思いから、ああいう屋根が生まれました」と語っている。

画像: オーナーの意向で、敷地に対し余裕をもって設計された建物は周囲を緑に囲まれ、家と家のあいだの通路や中庭にも、建物に交ざり込むように樹々が植えられている。こうした植栽のデザインも妹島和世建築設計事務所が行なった ほかの写真をみる

オーナーの意向で、敷地に対し余裕をもって設計された建物は周囲を緑に囲まれ、家と家のあいだの通路や中庭にも、建物に交ざり込むように樹々が植えられている。こうした植栽のデザインも妹島和世建築設計事務所が行なった
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画像: 上空から見た西野山ハウス。異なる角度の21枚の屋根をずらしながら配置しているため、季節や日の高さにより、時々刻々、一軒一軒違った角度で光が差し込む ©KAZUYO SEJIMA & ASSOCIATES ほかの写真をみる

上空から見た西野山ハウス。異なる角度の21枚の屋根をずらしながら配置しているため、季節や日の高さにより、時々刻々、一軒一軒違った角度で光が差し込む
©KAZUYO SEJIMA & ASSOCIATES
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 ガラス作家の三嶋りつ惠は、妹島建築への興味から住人となった。ベネチアのアトリエと京都を1カ月ごとに行き来する三嶋は、京都に別の住まいも持っている。同じ場所に2軒の家はいるのだろうかと一度は西野山ハウスを諦めたが、「1週間たったら気分が落ち込んで」、ゲストハウスとして借りることを決意した。「以前から宇宙船のような建物がこれからの京都には合うと漠然と思っていたのですが、ここにきてみたら現実にできていた。ひと目惚れです」。

画像: リビングから見た三嶋りつ惠の家。テラスを囲んでキッチン、リビング、バスルームがつながる。京都での住居が西日本豪雨の被害に遭った三嶋は、ゲストハウスとして借りたこの家に仮住まい中 ほかの写真をみる

リビングから見た三嶋りつ惠の家。テラスを囲んでキッチン、リビング、バスルームがつながる。京都での住居が西日本豪雨の被害に遭った三嶋は、ゲストハウスとして借りたこの家に仮住まい中
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画像: 畳を敷き和室に改造した部屋。ガラスのオブジェは三嶋、壁の絵は三嶋安住の作品 ほかの写真をみる

畳を敷き和室に改造した部屋。ガラスのオブジェは三嶋、壁の絵は三嶋安住の作品
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画像: ガラスのバスルームは自身のガラス作品で埋めた ほかの写真をみる

ガラスのバスルームは自身のガラス作品で埋めた
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 さらに動機のひとつとして、ガラス張りの空間をガラス作品で埋めたいという作家としての欲求もあったという。「透明の中に透明を置くとどうなるのか、反射の反射はどう見えるのか。ここはインスピレーションが降りてくる場でもあります」

 

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