アメリカと日本を行き来しながら、各地で都市的建築物を手がける建築家の重松象平。コロナ禍を受け、新たな都市づくりが議論される中で、重松が考察するこれからの都市と建築の可能性とは?

BY KEI WAKABAYASHI, PHOTOGRAPHS BY YASUYUKI TAKAGI, EDITED BY JUN ISHIDA

超高層建築の新たな可能性とは

「建築の都市化」とも呼べるこうした趨勢(すうせい)は、最も「建築化」され管理的に編成されるに至った超高層のビルにも新しい可能性をもたらすのではないかと重松は見ている。超高層ビルは、機能主義の権化のようにみなされ、利便性と効率を最大限に価値化してきたが、本来超高層ビルは、土地が足りていない空間を積層化することで、都市を拡張させるものと考えられてきたことを重松は指摘する。

画像: 「森ビルアーバンラボ」に展示された「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(仮称)」の模型(右端)。「虎ノ門ヒルズ駅」と直結する建物は、竣工済みの虎ノ門ヒルズの3つのビルともつながり、エリアの交通結節の拠点となる。2023年竣工予定

「森ビルアーバンラボ」に展示された「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(仮称)」の模型(右端)。「虎ノ門ヒルズ駅」と直結する建物は、竣工済みの虎ノ門ヒルズの3つのビルともつながり、エリアの交通結節の拠点となる。2023年竣工予定

「ル・コルビュジエが『輝く都市』で提唱した理想都市は、高層化と引き換えに地上のオープンスペースを増やすものでしたが、それよりも以前の20世紀初頭のスカイスクレーパーは、土地を積み重ねて、その中に庭つきの戸建てが並ぶようなもっと素朴な土地の増幅のイメージでした。しかしいつの間にか、オフィスが入る空間としてどんどん効率化されていくことになり、そのために多様な機能をひたすら詰め込んでいくことになりました。世界的に見れば、都市人口の増加は避けられない問題であるうえに、コロナによって『密』な空間は望ましくないということになれば、今一度、都市の面積を増やしていく方策として、超高層ビルを違った角度から見直す必要があるように思います。都市がこれまで排除してきたもの、たとえば、農地やエネルギー施設として活用することも可能なはずです。実際、ドバイなどで垂直農場はすでに実現していますから、超高層ビルを都市の食料インフラとして活用する考えは、荒唐無稽なものではありません。もちろん、公園や道などの人と人が出会う公共空間を格納する場所として再定義することもできるでしょう」

 超高層ビルというタイポロジーは、せいぜいまだ100年強の歴史しかないもので、そこにはイノベートする余地がありうる。重松は、そうした発想から、建築/都市には、まだ技術的なイノベーションの余地が十分にあると考える。同時に、それをどう持続的に管理・運用することが可能か、ビジネスモデルの革新もまた必要になる。

「僕は、実験的な都市が世界中にできることには決して否定的ではないんです。ただ、いわゆる『スマートシティ』や『スーパーシティ』構想といったものには、違和感があります。なぜかというと、まず現代都市の生活や価値観において何が広義のスマートなのかが深く議論されていないからです。もしそれが経済的な指針やテクノロジーの刷新を超えて定義できるとしたら『スマート・〇〇・シティ』や『スーパー・〇〇・シティ』を構想できると思います。その『〇〇』は、『農業』でもいいでしょうし『教育』でも『文化』でもいいと思うのですが、ただのインセンティブづくりではなくオリジナリティを備えた本質的な『実験』であってほしいですね」

画像: 大規模再開発「天神ビッグバン」の中心的存在になる「天神ビジネスセンター(仮称)」(福岡県福岡市) © OMANY

大規模再開発「天神ビッグバン」の中心的存在になる「天神ビジネスセンター(仮称)」(福岡県福岡市)
© OMANY

 都市を建築のように扱うことと、建築を都市のように扱うことの二律背反の間で巧みにバランスをとりながら、それをデザインに落とし込む建築家の仕事は、すでに技術としてのデザインの範疇を大きくはみ出している。ときにはプログラミングに関与し、またあるときにはビジネスモデルの構築にも参画することとなる。「企画力」が建築家の生命線になる、と重松は言うが、それは「プログラミング過多をいかにプログラムするか」という意味での「企画力」であるはずだ。

 今回、記事を書くために4時間近いインタビューを行ったが、その録音を聞いてみると、インタビューをしているこちらが話している時間が驚くほど長いことに改めて気づく。インタビューをしているつもりが、こちらがインタビューされているのだ。インタビューという機能的な業務の中で、重松は、その行為の中の「頼まれていない領域」を探っていたのかもしれない。あらかじめプログラムされがちな「インタビュー」を生成的な「対話」へと導いてゆく重松の語り口は、「頼まれていない空間をつくる」ことを可能にする「企画力」とは、語ることの雄弁さや説得力だけではなく、まずは「観察する力」に宿ることを明かしているのではなかろうか。

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