建築家フランク・ロイド・ライトが設計した、「帝国ホテル」2代目本館、通称「ライト館」。その記憶を受け継ぐスイートルームは、ライトのデザインエッセンスであふれている

BY JUN ISHIDA

 今から100年前、「東洋の宝石」と謳われたホテルが東京・日比谷に誕生した。モダニズム建築の三大巨匠の一人とされるフランク・ロイド・ライトの設計による、2代目「帝国ホテル」だ。「帝国ホテル」そのものの歴史は1890年にさかのぼる。渋沢栄一をはじめ、当時を代表する政財界人らの働きかけにより、西洋化を目指す帝都・東京のシンボルとして、初代本館は鹿鳴館の隣に造られた。

 そして、同じ地に建てられた2代目 帝国ホテルの本館「ライト館」は、正面玄関前に設けられた池を囲むように、低層のシンメトリーな建物で構成された。外内装には栃木県で産出する大谷石や常滑で焼かれたスダレ煉瓦を用い、目の前の日比谷公園の緑に調和するような構造と装飾を取り入れた。

画像: 「ライト館」のロビー。大谷石の彫刻や細い溝を施したスダレ煉瓦、中空煉瓦が古代遺跡のような空間を演出する。館内は国内外のゲストが交流する社交場としても機能し、ホテルの新しい役割を示した

「ライト館」のロビー。大谷石の彫刻や細い溝を施したスダレ煉瓦、中空煉瓦が古代遺跡のような空間を演出する。館内は国内外のゲストが交流する社交場としても機能し、ホテルの新しい役割を示した

画像: 日比谷公園に呼応するかのように立つ「ライト館」(1965年)。正面玄関部分は、愛知県にある博物館明治村に移築されている

日比谷公園に呼応するかのように立つ「ライト館」(1965年)。正面玄関部分は、愛知県にある博物館明治村に移築されている

 類を見ない空間として世界の旅行者に愛されたホテルは、耐震性等の問題から1967年に幕を下ろしたが、今もなおその記憶を色濃く受け継ぐ部屋が、「帝国ホテル 東京」にはある。2005年に登場した「フランク・ロイド・ライト®スイート」だ。

画像: 「フランク・ロイド・ライト®スイート」のリビング

「フランク・ロイド・ライト®スイート」のリビング

画像: 「フランク・ロイド・ライト®スイート」のダイニング

「フランク・ロイド・ライト®スイート」のダイニング

 本館の特別階「インペリアルフロア」にあるスイートは、入り口からしてほかの部屋とは異なる趣を見せる。重厚な木製の扉にはライトが好んだ幾何学模様が施され、「ライト館」で使用されていたものを再現した丸いドアノブとあいまって、ここから異世界が広がることを告げるかのようだ。

 玄関ホールでは、「ライト館」のデザインを再現した大谷石の壁面レリーフが出迎え、「ライト館」のガラス窓をモチーフにしたステンドガラスをあしらった扉を開けると、日比谷公園を望むリビングが現れる。玄関ホールよりも客室部分の天井を高くすることで、広々とした空間を演出するという仕掛けも心憎い。これもまたライトが好んで用いたテクニックであった。

 リビングから続くベッドルーム、ダイニング、そして書斎にも、随所にライトがデザインした家具が置かれ、壁はもちろんカーペットや天井のモールディングに至るまで、ライトの意匠が取り入れられている。いわば帝国ホテルのライトへの畏敬、そして愛情が詰まった一室だ。こうして、伝説のホテルの記憶は、100年の時を経て、未来へと受け継がれてゆくのである。

画像: 「ライト館」当時の壁面などが残る「オールドインペリアルバー」

「ライト館」当時の壁面などが残る「オールドインペリアルバー」

「ライト館」開業100周年を記念し、「フランク・ロイド・ライト®スイート」特別プランが登場。「オールドインペリアルバー」での記念カクテル、茶室「東光庵」での点茶も楽しめる。

「フランク・ロイド・ライト®スイートで極上のひととき」
2024年3月31日の宿泊まで
1室 1,400,000円〜(4名様まで。1泊朝食付。サービス料込、宿泊税別)
お問い合わせ先/帝国ホテル 東京 客室予約係
TEL. 03-3504-1251

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