BY EMI ARITA, PHOTOGRAPHS BY YUKARI KOMAKI
海や砂漠といった大自然や旧市街の美しい街並み、心ときめくかわいい物に溢れたモロッコは、無類の旅好きである古牧さんが、最も多く旅した場所。訪れる度に買い足してきた食器や雑貨は、今も古牧さんの暮らしに欠かせない存在になっている。
「モロッコにはこれまで7回訪れています。初めて旅したのは20代の頃。仕事で訪れたパリコレの帰りに休暇を取って行きました。その時は、スペインの外れにある海峡から船でモロッコに入ったんですけど、“ついにアフリカ大陸にきた!”と、とても感動したのを覚えています。
それからすっかりモロッコにハマってしまって、20代後半から3年間パリ暮らしをしていた頃には、バカンスの定番スポットになっていました」
毎回必ず買っているというのが、モロッコスリッパ。特に女性物のキラキラとした装飾がお気に入りだと古牧さん。「旧市街の小道には、食器や日用品、土産物と、いろんなお店がずらりと並ぶスーク(市場)があって、そこで買い物をするのが、毎回のお楽しみです。スリッパなどの革物はピンクやブルー、グリーンとカラーパレットも豊富なので、“今回は何色を買おうかな〜”って考えるのも楽しいですし、どのアイテムもハンドメイトならではの風合いが感じられて素敵なんです」
2015年に訪れた時には、カサブランカやシャウエン、マラケシュやメルズーガ(サハラ砂漠)など、約500kmをバスで巡ったそう。「繊細なモザイクタイルの装飾をはじめ、イスラム様式の建築が大好きで、この旅ではモスクや宮殿などを巡りました。イスラム文化とヨーロッパ文化が溶け合うことで生まれたモロッコの美しい建物や街並みは、何度見ても感動してしまいます」
街全体がブルーに染められた旧市街、シャウエンもモロッコならではの景色を楽しめる場所だそう。「建物の壁も、道も、全部がブルーに塗られているだけなんですが、キッチュなムードがかわいい!今風に言うと“映えスポット”で、なぜ青いのかは、暑さを和らげるためとか、虫除けのためとか、あるいは青がイスラム教で重要な色だったからとか、諸説あってはっきりとした理由はわからないようなのですが、おとぎの世界みたいなんです」
「マラケシュにあるイヴ・サンローランの別荘・マジョレル庭園も、ピンクやブルーなどあちこちに色が散りばめられていて素敵でした。それになんといってもお庭が圧巻!池を囲むようにたくさんの植物が生い茂っていて、ブーゲンビリアの花の香りや小鳥の囀りにも癒されます」
マラケシュからメルズーガ(サハラ砂漠)の間に位置する世界遺産・アイトベンハドゥもモロッコ観光で人気のスポットのひとつだという。「映画『グラディエーター』のロケ地にもなった場所で、要塞の中は迷路のように道が入り組んでいて、歩いているだけで探検気分が味わえます。途中途中には住居やお店がありました」
「美味しい食べ物との出合いもモロッコの旅の醍醐味のひとつ。 いつもハーブなど現地の食材をたくさん買って帰ってきます。市場に売っているフルーツも美味しいし、カフェやレストランの食事もヘルシーで体に優しいものばかりなんです」
「あとモロッコといえばやっぱりタジン鍋!連載7回目「友と楽しむ、お茶とアペロ編」で紹介した魚のタジン鍋は、2015年の旅ではないのですが、モロッコの海の方を巡った際に、エッサウィラで現地の方に教えてもらったレシピをアレンジしたものです。とっても簡単で美味しくて、モロッコの思い出も詰まった、我が家の定番レシピになっています」
見所も食べ処も満載のモロッコだが、古牧さんがいちばん好きなのは、2015年の旅でも訪れた、メルズーガ(サハラ砂漠)だという。「モロッコの旅で砂漠を訪れた際には、よくキャンプをするんです。夜には満天の星空が見られるんですが、それを眺めていると、不思議な気持ちになります。
世界中の誰もが、同じ星空の下にいるのに、国や文化の違いがあり、一人ひとりが全く異なる人生を歩いている……とか、普段は考えたり、感じたりしないことに思いを巡らせてしまいます。でも、そういう時間がなぜかとても心地いいんです。モロッコの砂漠は、喧騒から離れて心の声に耳を澄ますことができる、特別な場所になっている気がします」
2015年の旅のあと、「そろそろまたモロッコへ」と思っていた頃にコロナ禍となり、再び旅する日を心待ちにしているという古牧さん。モロッコで購入したミントティー用のティーセットでお茶をするひとときは、モロッコへの思いを馳せる時間にもなっているという。
「モロッコのミントティーは、大盛りのミントの葉っぱを入れて作るんですが、お砂糖もたっぷり入っていてすごく甘いんです(笑)。だから本格的なモロッコ風ミントティーを作る機会はあまりないですが、ミントティーを飲む時は必ず、このティーセットでいただくようにしています。次回の旅を楽しみにしつつ、今、ここにあるモロッコの物たちと日々の暮らしを紡いでいます」
古牧ゆかり
スタイリスト/ビジュアルディレクター。ファッション誌で活躍後、渡仏。パリに暮らす。帰国後『エル・ジャポン』のファッションエディターに。現在はフリーでファッション、インテリアのスタイリングや動画制作のビジュアルディレクションを手がける。本誌ファッション特集でも活躍中。
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