美しい造形美に、快適な座り心地......。たった一脚でも、住まいを洗練の空間へと昇華させてくれる「名作」と呼ばれる美しき椅子。今回は、背もたれの美しいカーブや、曲線的なフォルムで、空間にアクセントを添えてくれるダイニングチェアの名作を厳選紹介

BY EMI ARITA

ミヒャエル・トーネットの「No.214」

「No.214」¥242,000/トーネット(YAMAGIWA)

COURTESY OF YAMAGIWA

 1819年に木工房として誕生し、近代デザインにおける数々の革新的な技術を開発したドイツのトーネット社。1859年に誕生した「No.214」は、創始者のミヒャエル・トーネットが、1850年代に確立した曲木技術により生まれた椅子で、モダン家具の始祖とも言われている名作。軽くて丈夫、どんな空間にも調和する汎用性の高いデザインに加えて、たった6つのパーツで作られたシンプルかつ分解可能な構造は、効率的な生産や輸送を実現。画期的な流通システムを生み、世界で初めて大量生産された椅子として今も世界中で愛用されている。
 ビーチ材のフレームはナチュラル、ウォルナット、ブラックなどスタンダードカラーのほか、ブルーやイエロー、グリーンやレッドなど豊富なカラーが揃う。また、座面はラタン(籐)編みか成形合板からセレクト可能。誕生から160年以上経っても色褪せないタイムレスな美しさを放つ名作で、長く愛用できるダイニングセットを設えたい。

画像: COURTESY OF YAMAGIWA

COURTESY OF YAMAGIWA

YAMAGIWA
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剣持勇の「ダイニングチェア No.207」

「ダイニングチェア No.207」¥207,900/秋田木工(メトロクス)

COURTESY OF METROCS

 日本のインダストリアルデザイン界のパイオニアとして知られる剣持勇がデザインし、1964年にグッドデザイン賞を受賞している「ダイニングチェア No.207」。中国明時代の伝統的な木の椅子をモダンにアップデートさせたもので、背もたれからアームを形成する曲木のアーチは、まっすぐな木を曲げたとは思えないほど美しいカーブを描く。
 製作を手掛けているのは、曲木の技術を専門として100年以上の歴史を誇る秋田木工。10脚製作すると3脚は失敗するといわれるほど、高度な曲木技術が必要な「ダイニングチェア No.207」のデザインを、秋田木工の熟練の職人技で見事に作り上げている。片手で持てるほど軽量かつ丈夫なため、何かと動かす機会の多いダイニングチェアとしての実用性も申し分ない。

COURTESY OF METROCS

メトロクス
TEL. 03-5777-5866
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コーア・クリントの「KK9662 フォーボーチェア」

「KK96620」¥596,200〜/カールハンセン&サン

COURTESY OF CARL HANSEN & SØN

 ミッドセンチュリー期に活躍した北欧のデザイナーたちに多大な影響を与えたことから、“デンマーク近代デザインの父”と称されるコーア・クリント。1914年にデザインした「KK9662 フォーボーチェア」は、当時まだ20代の若手デザイナーだったクリントが、デンマーク・フュン島のフォーボー美術館のために製作した椅子。
 柔らかなカーブで体に心地よくフィットする背もたれや広めの座面は、展示品をじっくりと鑑賞できるように考え抜かれたもの。美術館のモザイクタイルの床と調和するようデザインされた籐の網目も美しく、椅子そのものが美術品のよう。美術館の展示に合わせて簡単に移動ができるよう軽量なため、ダイニングチェアとして迎えるにもぴったり。クラシカルな雰囲気も漂う優美なフォルムに、外向きにカーブした後ろ脚と、テーブルにセットした際の後ろ姿を眺めるのも日々の楽しみになりそうだ。

画像: COURTESY OF CARL HANSEN & SØN

COURTESY OF CARL HANSEN & SØN

カール・ハンセン&サン 東京本店 / 大阪  
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エリック・グンナール・アスプルンドの「ヨーテボリ,1」

画像: 「ヨーテボリ,1」¥396,000~/カッシーナ COURTESY OF CASSINA IXC.

「ヨーテボリ,1」¥396,000~/カッシーナ

COURTESY OF CASSINA IXC.

 曲線的なフォルムにより、シンプルながら温かみを感じる「ヨーテボリ,1」。デザインを手掛けたのは、ストックホルムにある世界遺産「森の墓地(スクーグシュルコゴーデン)」の設計に携わったほか、「スカンディア・シネマ」や「ストックホルム市立図書館」など、北欧を代表する近代建築を設計したスウェーデンの建築家、エリック・グンナール・アスプルンド。
 1937年にアスプルンドが完成させた、ヨーテボリ庁舎の裁判所のためにデザインした椅子で、優雅なアーチ状の背もたれと、緩やかにカーブした脚が特徴。その構造からトーネット社の「No.214」に影響を受けたとされているが、背もたれのアーチ部分は曲木ではなく、曲げたスチールで構成。上からポリウレタンフォームで包みレザーを被せているため、ほどよいクッション性が備わり、寄りかかった際には体を心地よく支えてくれる。アッシュ材のフレームはナチュラル仕上げかブラック塗装からセレクト可能。張り時も豊富な素材やカラーから選ぶことができる。

画像: COURTESY OF CASSINA IXC.

COURTESY OF CASSINA IXC.

カッシーナ・イクスシー 青山本店
TEL. 03-5474-9001
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ノーマン・チャーナーの“チャーナーチェア”

画像: 「ノーマン・チャーナー アームチェア」¥352,000/ザ・コンランショップ COURTESY OF THE CONRAN SHOP

「ノーマン・チャーナー アームチェア」¥352,000/ザ・コンランショップ

COURTESY OF THE CONRAN SHOP

 独創的なフォルムが魅力的な「ノーマン・チャーナー アームチェア」。1958年にアメリカ人デザイナー、ノーマン・チャーナーが発表したもので、ドイツの「ヴィトラ デザイン ミュージアム」をはじめ、世界中の展覧会で紹介されるなど、ミッドセンチュリー期の家具デザインを象徴する存在として知られている。
 そのアイコニックなフォルムは、当時革新的だったプライウッド(成形合板)と無垢の曲木技術を融合させることで実現。華奢なくびれを持つ独創的なシェルに、大きく弧を描くようにカーブした曲木のアームと、大胆で美しい造形と堅牢な構造は、今なお見る人を魅了する。ミッドセンチュリーのアイコンチェアで遊び心を添えるように、ダイニングをコーディネートして楽しみたい。

画像: COURTESY OF THE CONRAN SHOP

COURTESY OF THE CONRAN SHOP

ザ・コンランショップ
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