映画『君の名前で僕を呼んで』のロケ地となったのは、監督のルカ・グァダニーノが運命的に出会った17世紀の建物。片田舎に佇むその古き建物は、いかにして命を吹き込まれたのか

BY HILARY MOSS, PHOTOGRAPHS BY GIULIO GHIRARDI, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI(RENDEZVOUS)

画像3: 『君の名前で僕を呼んで』の
舞台、パールマン家の
別荘ができるまで

玄関ホール

 飾り気のなかったヴィラ・アルベルゴーニの玄関に、ヴィスコンティ・ディ・モドローネは大きな地図を何枚も飾ることにした。地図はヴェローナの古書店『ペリーニ』で手に入れたものだ。玄関の先に続く廊下には、別荘の敷地内で見つけた堅い椅子を置いた。映画の中ではパールマン一家は別荘とともに、こうした家具を代々受け継いでいるという設定になっている。ヴィスコンティ・ディ・モドローネはさらに、玄関に置いた花瓶に笹の葉がいつも活けてあるよう注意を払っていた。「この廊下には生き物が必要なの。あたかもパールマン夫人が庭でこういう葉を採ってきて活けたような感じを出したかったんです」

画像4: 『君の名前で僕を呼んで』の
舞台、パールマン家の
別荘ができるまで

 庭の制作を任されたのは、グァダニーノとヴィスコンティ・ディ・モドローネの友人である庭師のガイア・シャイエ・ジュスティだ。彼女は、別荘の庭に東屋をつくり、本来はロンバルディア州には自生しないアプリコットと桃の木をそこに植えることにした。「私たちは本物の熟れた桃をいくつかとりつけたけれど、ほとんどは小道具の偽物なの」とヴィスコンティは説明する。「こんなふうにしていろんなものが作り上げられていくのは驚くべきことね――映画の中では、どんなことでもできるのよ」

画像5: 『君の名前で僕を呼んで』の
舞台、パールマン家の
別荘ができるまで

のちにオリバーの寝室になる、主人公エリオの寝室

 映画の主人公である17歳のエリオは、アーミー・ハマー演じる博士課程の学生オリバーに自分の寝室を譲ることになる。エリオが飾っていた何枚ものポスターはそのままだ。身長が195cmもあるハマーが眠れるよう、2つのベッドをくっつけなければならなかった。

画像6: 『君の名前で僕を呼んで』の
舞台、パールマン家の
別荘ができるまで

エリオの2番めの寝室

 ハマーに部屋を譲ったエリオは、家の隣にある倉庫へと寝室を移す。そこはヴィスコンティ・ディ・モドローネが気に入っている仕事場だ。「この部屋は、パールマン家の中でいらなくなったものがすべて詰め込まれた乱雑な場所なの。けれどもエリオはここで寝泊まりしなくちゃいけない。同時に、部屋のカメラ写りも良くなければならなかったんです」。机の上に置かれているのは、80年代のティーンエージャーが読んでいたであろう本や漫画。長い年月のあいだに集積されたものたちによって、この部屋は――そして別荘全体までもが――時を超えた特別な存在へと生まれ変わったのだ。

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