かつてないリアルな“没入感”で人々の心を奪うバーチャル・リアリティー。その世界を強大な力でリードするのがアダルト・コンテンツだ。日々進化する技術を背景に、その存在は人間関係の根幹までも変えようとしている

BY ALYSON KRUEGER, PHOTOGRAPHS BY GRAHAM WALZER, TRANSLATED BY G. KAZUO PEÑA

ヘッドセットはまだ序の口でしかない

 ダーリングが最初に“ふつう”のVRを体験したのは、「E3」というテレビ・ゲームの見本市でだった。そこでポルノ分野におけるVRの可能性に注目した彼女は、アメリカの掲示板サイト「Reddit」を通じてVR技術に詳しい大学生と知り合った。知識はあるもののスター的な存在を探していた彼の協力を得て、ダーリングはロサンジェルスにある自宅のベッドルームから、VRのライブ・ストリーミングを毎週配信するようになった。

「AVNメディア・ネットワーク」のカーンズいわく、ダーリングはVR版ウェブカム・ウーマン(ウェブカメラを使って、自身の生活や性行為をネットで配信する女性)の先駆者のひとりだ。その後、VRのストリーミング・テクノロジーを開発するため「VRTube.xxx」という会社を立ち上げた彼女は、現在40人以上のパフォーマーを雇い、そのテクノロジーを用いてアダルト動画のライブ・ストリーミング・サイト「Cam4.com」へコンテンツを供与している。

画像: リアルボティクス社が製造するVRセックス・ロボット「ハーモニー」の“脳”を調整するCEOのマット・マクマレン

リアルボティクス社が製造するVRセックス・ロボット「ハーモニー」の“脳”を調整するCEOのマット・マクマレン

 性的虐待、性感染症、性的搾取といった可能性をはらんだポルノグラフィーという業界は、総じて規制が困難だ。バーチャル・コンテンツとなると、さらに倫理的な、あるいは法的な問題が生じてくる。例えば、誰かの肖像を勝手に使ってVR空間で性的交渉をもつことは許されるのか?

「バーチャル・リアリティーは、ワイルド・ワイルド・ウェスト(開拓時代の米国西部地方のように、何でもありの無法地帯)みたいなものね」と言うのは、ブライオニー・コール。彼女はテクノロジーと性的関心をテーマとするポッドキャスト「Future of Sex(セックスの未来)」の司会者である。

 毎年1月、ラスベガスで開催されるアダルト業界の展示会と見本市「AVNアダルト・エンターテインメント・エキスポ」で、2017年はVRポルノに関する最新の技術が公開された。
 ライブ・セックス動画に特化したウェブサイト「キャムソーダ」は、胸元を広くあけた水着姿のポルノ女優が来場者をブース内へと招き入れるプロモーションを行っていた。彼女たちが紹介していたのは、VRヘッドセットにとりつけた、性行為中の香りを放つ小型の装置「オーローマ」だ。「驚くかもしれませんが、これを調香したのは『キャムソーダ』の女優たちです」とイベントに参加したカーンズは説明する。「甘くてムッとした香り。彼女たちは男性の好みをよく知っていますからね」

 VRポルノに味覚や触覚を導入している会社もあれば、同じくVRポルノの大手であるベンチャー「カーマスートラVR」は、ある特定の人間、あるいは特定の身体の一部に142台のカメラを使う。「そうして撮影した映像をつなぎ合わせ、実際の生身の人間と見分けがつかないビジュアルを創り出すのが彼らの目的です」とカーンズは言う。「彼らはきっと、こんなVRシステムが自宅にあったらなぁと考えたに違いありませんね」

 そのほか、アダルト・グッズの製造会社と提携して開発した、VRコンテンツと連動するバイブレータを紹介するVR会社もブースを設けていた。「映像の動きが激しくなるにつれて、バイブレーターの振動も激しくなる仕組みです」とカーンズ。

 

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