写真家の若木信吾が今秋、絵本レーベルを立ち上げた。同じ本であっても写真集を作り出すのとはまったく真逆のクリエイションであったと語る絵本作り。その先に見えてきた、清々しい景色とは

BY ASATO SAKAMOTO, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 若芽舎の絵本第1作目として今年9月に発売した『しんまいぐま』(作・絵:オカタオカ)は、狩りが苦手なクマが主人公。先輩グマの真似をして川に入るが、なかなか上手く魚を獲ることができない。奮闘するクマの姿はオノマトペを多用して表現され、見開きもしくは1ページごとに山場が設けられ、どんどん状況が変化していく作りになっている。そこに分かりやすい起承転結はない。

「2歳児に起承転結のあるストーリーは通用しません。それよりも、1ページごとの絵や状況に対して、いかに親が解説できたり書いていない音をつけて読んであげられるか。たとえば、絵本に書いてあるのは『ギョエ!』だけだけど、そこに『うわー、食べられるー!』まで付け加えることができるかどうかなんです。そうやって親が感情移入して読むことで子どもは盛り上がる。2歳児向けの絵本作りはそこが重要だと僕は思っていて、1ページ1ページの絵や言葉がそういう状況を作れているかどうかを見極めながら作っていきました」

画像: 「今回一緒に絵本を作ったイラストレーターの中には、子どもがいない人も。でも、そんなことは関係ないっていうことがよく分かりました。彼らの豊かな想像力、クリエイティブマインドの高さには本当に感心しました」 ほかの写真をみる

「今回一緒に絵本を作ったイラストレーターの中には、子どもがいない人も。でも、そんなことは関係ないっていうことがよく分かりました。彼らの豊かな想像力、クリエイティブマインドの高さには本当に感心しました」
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 12月に発売される『スノーマン』(写真:黄瀬麻以 絵:リーバイ・パタ)も同様だ。北海道で撮影されたという雪景色の写真の上にさまざまな模様や顔がドローイングされているのだが、そこに“ストーリー”は存在しない。狭いページのなかに散りばめられているのは小さなアイデア。読み手はそれを見つけ出し、指を差しながら話を進めることで自然なリアクションが取れるようになっている。ある意味、1ページごとに完結しているので、大人も子ども最後まで飽きることなく読める。気に入った本はすぐにリピートしたがるのがこの時期の子どもの特徴だが、全12ページなら繰り返し読む大人も、それほど苦にはならない。若木はそこまで考えて絵本作りを進めていた。

 5組のクリエイターと取り組んだ5冊の絵本作り。若木はディレクターとして全体を指揮するだけでなく、佐伯ゆう子氏が絵を手掛けた『わたしのゴールデンベル』では、作者としても参加している。これまで写真エッセイのような形で言葉を綴ることはあったが、作家として創作するのはこれが初めてとなる。

「まずは叩き台となるストーリーや言葉の集まりを自分が用意して、そこから佐伯さんと詰めていきました。絵に乗ったときに違うなと思ったところを書き直したり、声に出して読んだときにリズム感や音感が良いかどうかを何度も確認して。引き合いに出すのも畏れ多いけれど、村上春樹さんの作品の良さって半分は言葉のリズム感の良さだと思うんですよね。絵本は特に言葉のリズムや音の感じ方が重要です」

 

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