写真家の若木信吾が今秋、絵本レーベルを立ち上げた。同じ本であっても写真集を作り出すのとはまったく真逆のクリエイションであったと語る絵本作り。その先に見えてきた、清々しい景色とは

BY ASATO SAKAMOTO, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

「本って、これでいいのかもしれない」
 絵本という領域に足を踏み入れた若木が、写真家として持ち帰った答えだ。

「もともと写真もプリント派ではないというか、展覧会で写真を発表するというより、本などのメディアに写真を落とし込んで見せることが好きで今までやってきました。そうするとどうしても本の装丁にこだわり過ぎてしまったり、フォーマットとしてのメディアの在り方が気になってしまうんですよね。でも、今回絵本を作ってみて、そこから一気に抜け出せた感じがしています。そんなことより、もっと写真の力を信じよう。信じてあげなきゃと思うようになったんです」

 装丁やメディアフォーマットの力に頼らなくとも、写真やイラストそのものが強い力を持っていれば伝わるものがある。明確なターゲット(=2歳児)を設け、あえてフォーマットを決め込み作品を作ったからこそ得ることのできた感覚だ。自分自身がまずその力を信じなければいけないという気付きはまた、作家としての原点回帰とも言えるかもしれない。

画像: 来年3月から、また新たな絵本を5冊発表する予定。現在はその制作の追い込み中だという ほかの写真をみる

来年3月から、また新たな絵本を5冊発表する予定。現在はその制作の追い込み中だという
ほかの写真をみる

 若木はこの若芽舎で、絵本をもう5冊発表するべく計画を進めている。その先のことはまだ決めていないが「その時にやってみたいと思ったことをやり続けたい」と話す。
「絵本を作ることを決めたとき、実は最初に使う予算を決めたんです。要は“このお金でどこまで遊べるか?”ということです。これからも銀行口座と相談して“いけるかも?”と思ったらどんどん新しい遊びにチャレンジしていきたいですね」

 その遊びの舞台はこれからも必ず“メディア”である、と彼は断言する。
「家や車を買っても自分の楽しみにしかならないけど、メディアだったら誰かと共有することができるでしょ? 売れた、売れないでドキドキするしね(笑)。それに、ずっとメディアに関わる仕事をしてきたわけだから、そこで遊べたら一番いいなと思っています。クリエイティブに関してはいつも真剣だけれど、そうやっていつまでも遊びが続いていくことが僕の理想です」

 若木信吾の“大人の遊び”は、これからも続いていきそうだ。その展開は、若芽舎の絵本のように、起承転結も脈略もないものかもしれない。けれど、彼の真面目で純粋な遊びは、世代やメディアの枠組みを越えて、いつも誰かの瞬間を楽しさで満たしてくれるに違いない。

*次ページでは、若木信吾が「大人も子どもも楽しめる絵本」をセレクト →

「若芽舎」ミニ絵本シリーズ

第1弾『しんまいぐま』作・絵:オカタオカ
第2弾『バゲットさんのオープンカー』作・絵:ボブファンデーション
第3弾『わたしのゴールデンベル』絵:佐伯ゆう子 作:若木信吾
第4弾『スノーマン』写真:黄瀬麻以 絵:リーバイ・パタ(2018年12月19日発売)
第5弾『オーロラロケット』作・絵:とものかなこ(2019年1月29日発売)
※発売日は変更になる場合がございます。

問い合わせ先
BOOKS AND PRINTS
TEL. 053(488)4160
公式サイト

若木信吾(SHINGO WAKAGI)
写真家/映画監督。1971年静岡県浜松市生まれ。ニューヨーク州ロチェスター工科大学写真学科卒業。雑誌・広告・音楽媒体など幅広い分野で活動中。雑誌「youngtreepress」の編集&発行を務め、浜松市の書店「BOOKS AND PRINTS」のオーナーでもある。映画監督としても活動し、作品に『星影のワルツ』『白河夜船(原作:吉本ばなな)』などがある。
www.shingowakagi.net

 

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