3月15日から東京・TOC五反田メッセに、いよいよ彼らがやってくる。ザ・ローリング・ストーンズの半世紀にわたる活動の全貌を一覧する『EXHIBITIONISM―ザ・ローリング・ストーンズ展』。ロンドン、NY、シカゴなど世界各地を熱狂させた展覧会を、新谷洋子がレポートする

BY YOKO SHINTANI

 キャリア初の大規模な展覧会を開くにあたって、ザ・ローリング・ストーンズは言い得て妙なタイトルを選んでいる。ずばり『EXHIBITIONISM-ザ・ローリング・ストーンズ展』。説明するまでもなく“exhibition”は“展覧会”を意味するわけだが、“exhibitionism”となると“自己顕示癖”を指す。思えば彼らは生粋のexhibitionist集団であり、東京・TOC五反田メッセで始まろうとしている本展は、これまで半世紀以上にわたって、“俺ら、すごいでしょ”と自己を顕示してきたロックンロール・バンドのミュージシャンシップとショウマンシップを、様々なアングルから伝えている。

画像: 歴代のコンサート・ポスターやアルバム・ジャケットが揃う、「アート&デザイン」のセクション

歴代のコンサート・ポスターやアルバム・ジャケットが揃う、「アート&デザイン」のセクション

 2016年4月から9月まで、バンドの故郷であるロンドンのサーチ・ギャラリーで開催され、以来ニューヨーク、シカゴ、ラスヴェガス、ナッシュヴィルとアメリカを縦断し、シドニーを経て東京にやってきた『EXHIBITIONISM-ザ・ローリング・ストーンズ展』は、現在の4人のメンバー――ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツ、ロン・ウッド――が自らプロデュース。本人たちが深く関与しているという点において、開催者側に内容が委ねられていたデヴィッド・ボウイの『DAVID BOWIE is』やピンク・フロイドの『Pink Floyd: Their Mortal Remains』といった、同様に大きな話題を呼んだ近年の展覧会とは一線を画している。

 キュレーターには、米国のクリーヴランドにあるロックの殿堂で展覧会部門のディレクターを務めていた、アイリーン・ギャラガーを起用。両者の密なコラボレーションによって生まれたこのストーンズ・ワールドは、スタイル、フィルム、アート&デザインなど9つのセクションで構成。いずれもカラフルでポップなトーンでまとめられ、楽器、衣装、ポスター、写真、手書きの歌詞、ステージ模型など、バンドのアーカイヴやコレクターから集めた500点以上のアイテムで埋め尽くされている。

画像: メンバーの手書きの歌詞や覚え書きが展示されたコーナーより。ミックが綴った『ホエン・ジ・ウィップ・カムズ・ダウン』(1978年発表)の歌詞

メンバーの手書きの歌詞や覚え書きが展示されたコーナーより。ミックが綴った『ホエン・ジ・ウィップ・カムズ・ダウン』(1978年発表)の歌詞

画像: 1951年、当時通っていた故郷ケント州ダートフォードの小学校で撮られた9歳のミックの写真

1951年、当時通っていた故郷ケント州ダートフォードの小学校で撮られた9歳のミックの写真

 コラボレーションといえば、その時々に最高のクリエイターたちの手を借りて自らのイメージを作り上げてきたストーンズ。アート&デザインなら、アルバム『スティッキー・フィンガーズ』(1971年)のあのジッパー付きジャケットを手がけたアンディ・ウォーホルから、結成50周年に際してロゴをアップデートしたシェパード・フェアリー。スタイルなら、70年代にミックのために多数のジャンプスーツを提供したオジー・クラークから、2013年のツアーでキースのワードローブを担当したエディ・スリマンまで。そしてフィルムなら、上映が禁じられているドキュメンタリー映画『コックサッカー・ブルース』(1972年)の監督ロバート・フランク、ライヴ映画『シャイン・ア・ライト』(2008年)を撮ったマーティン・スコセッシ…… と、そうそうたる名前が並ぶ。

 なにしろ活動を始めたのは1962年にさかのぼるだけに、本展を観覧することは、半世紀分のポップ・カルチャーの歴史をたどるのも同然。当時まだ「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ」の学生だったデザイナーのジョン・パッシュが1971年に考案した、あのアイコニックな唇のロゴにまつわるストーリーについても、本展の中で詳しく触れている。ストーンズは音楽にしてもヴィジュアルにしても、ずば抜けて実験的、あるいはコンセプチュアルなアプローチをとる人たちではないが、それだけに難解な説明を必要としない。とにかくどこを見ても、そのスケールの大きいこと、派手なこと、挑発的なこと、そして面白いことをして、自らが楽しみ、ファンを楽しませてきた彼らの、旺盛な遊び心が感じられるはずだ。

画像: 古くは1963年、最近では2010年代前半に着用したものまで多数の衣装が集められたスタイルのセクション。サイケデリック、グラム、ボディコンシャスといった具合に、半世紀にわたるトレンドの変遷をたどることができる

古くは1963年、最近では2010年代前半に着用したものまで多数の衣装が集められたスタイルのセクション。サイケデリック、グラム、ボディコンシャスといった具合に、半世紀にわたるトレンドの変遷をたどることができる

画像: スタイルのセクションより。蝶のパターンのジャケットは、ミックの長年のパートナーだったデザイナーのローレン・スコットが、2013年のハイド・パークでのコンサートのためにデザインした PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE ROLLING STONES EXHIBITIONISM JAPAN PRODUCTION COMMITTEE

スタイルのセクションより。蝶のパターンのジャケットは、ミックの長年のパートナーだったデザイナーのローレン・スコットが、2013年のハイド・パークでのコンサートのためにデザインした
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE ROLLING STONES EXHIBITIONISM JAPAN PRODUCTION COMMITTEE

 中でも、年代順に衣装を披露しているスタイルのセクションはさすが、ため息が出るような華々しさで目を引く。実際に衣装を提供したことがあるアナ・スイ、トミー・ヒルフィガー、ジョン・バルベイトス、3人の音楽マニアのデザイナーがコンサルタントを務めたという。展示の大半を占めるのは、個人的にかなりの点数を保管していたミックの衣装で、若い頃は時にフェミニンなファッションも自由に取り入れ、ボウイやクイーンのフレディ・マーキュリーに劣らぬジェンダーレスな演劇性を誇った彼の、ファッション・アイコンとしての存在感を今さらながらに思い知らされる。

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