BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPHS BY KIKUKO USUYAMA
「意外かもしれませんが、日本のマンガはイギリスと無縁ではありません」。大英博物館で開幕した『The Citi exhibition Manga』展のキュレーター、ニコル・クーリッジ・ルマニエールはそう話す。この展覧会は、日本初の職業マンガ家である北澤楽天、岡本一平から、手塚治虫、鳥山明、萩尾望都、尾田栄一郎といった現代の作家までを取り上げ、日本マンガの成り立ちと独自の表現方法、つまり“マンガの読み方”を伝えるもの。単行本や原画に加え、コスプレやコミックマーケットなどの資料、マンガに着想を得た現代アート、井上雄彦の描き下ろし絵画やスタジオジブリを取材したドキュメント映像と見どころも豊富だ。
しかしなぜイギリスの博物館でマンガ展を? その疑問に彼女は先のように答え、こう続けた。「たとえば、日本で初めて吹き出しを用いた『正チャンの冒険』はイギリスのコミック『Pip, Squeak and Wilfred』に影響を受けたと言われています。現代の作品にもイギリスの作家ルイス・キャロルの不思議の国のアリス』をモチーフにしたものも多い。マンガにはイギリスと日本の文化的な“交わり”が見られるのです。もちろん大英博物館も日本のマンガと深い関係がある。日本の視覚文化の系譜に連なる葛飾北斎や河鍋暁斎の作品を収蔵しており、近年はマンガの原画もコレクションに加わっています」
実のところ、大英博物館はこれまでに二度、日本のマンガ家の原画展を開いている。2009年には、『宗像教授伝奇考』で知られる星野之宣の『宗像教授の大英博物館の大冒険』展を。これが評判を集め、2015年には星野之宣、ちばてつや、『聖セイント☆おにいさん』の中村 光という異世代の3人を取り上げた『マンガなう:三つの世代』展を開いた。こうした作家と博物館をつないだ立役者こそが、ルマニエールだ。