“キング・オブ・ショービジネス”のボブ・フォッシーの威光は、急逝から30年以上たった現在も衰えを知らない。そこには、フォッシーの偉業を形骸化させず、真意をていねいに伝えることに邁進する、チェット・ウォーカーのような愛弟子の存在がある

BY NATSUME DATE, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した自伝的映画『オール・ザット・ジャズ』の影響が強いせいか、フォッシーには女性関係やドラッグで身を持ち崩し気味の、自暴自棄でエキセントリックなイメージがあるけれど、近くにいたウォーカーはこれを否定する。

「ふだんのフォッシーさんは、O脚に短パン姿で、デニムのシャツの下から手術の痕が見えていたような人。庭仕事が好きで、料理が好きで、車はステーションワゴン。ジャガーかなんかに乗っていそうだけど、ファミリーカーだったんですよ(笑)。とにかく、ものすごくふつうなんです。そして言っていました。『みんな僕をすごく面白い人間だと思ってるようだけど、それならそう思わせておけばいいじゃないか』って」

画像: 抜群の歌唱力と表現力で魅了する迷える王子ピピンの城田優と、彼をサーカスの世界に誘い込むリーディングプレイヤーのCrystal Kay © GEKKO

抜群の歌唱力と表現力で魅了する迷える王子ピピンの城田優と、彼をサーカスの世界に誘い込むリーディングプレイヤーのCrystal Kay
© GEKKO

 仕事に対してはつねに多くのことが頭にあり、若干の違和感を覚えることがあっても、あきらめずに走り続けていた。「やるべきことがあり過ぎて朝になったことにも気づかず、2時間しか寝られない日々の中で、ついに心臓発作を起こしたんです。酒やドラッグのせいだと世間は思いたがるけれど、真実はそういうことでした」

 1987年、ミュージカル『スィート・チャリティー』のリバイバル公演初日の開幕直前に心臓発作を起こし、そのまま帰らぬ人となったフォッシー。倒れる5分前まで一緒にいたウォーカーは、そのレガシーを正確に伝えることができる貴重な継承者となった。「私はフォッシーさんには、ただ尊敬しかありません。彼の芸術性、人との仕事のしかた、他の人では見い出せない能力や魅力を、パフォーマーから引き出す才能。クリエイティブで聡明で、ほんとうに本物のアーティストでした。ただ、讃え崇めるよりも、彼の芸術性を伝えていけるかどうかのほうが、今は重要です。

画像: フォトグラファーがOKを出しても「こんなのはどうかな?」と次々におちゃめなポーズを見せてくれたチェット・ウォーカー氏。人を喜ばせ楽しませたいという情熱はこんなところにも

フォトグラファーがOKを出しても「こんなのはどうかな?」と次々におちゃめなポーズを見せてくれたチェット・ウォーカー氏。人を喜ばせ楽しませたいという情熱はこんなところにも

 彼はステップを教えるのではなく、ストーリーを伝える人でした。彼の仕事を正確に伝えるには、振付の背景にある膨大な情報をともに伝えなければならないんです。単なるステップの再現に終わると、芸術性の部分が薄れてしまう。そうなっていくことをとても危惧しています。ボブ・フォッシーというアーティストは、おそらくみんなが思っているよりも、ずっと知的で深遠な表現を目指していた人。それを伝えていけると、いいんですけどね」

 ボブ・フォッシーが心臓発作で急逝して32年。「もう何トン分も言わなきゃいけないことがあってね」と朗らかに語るチェット・ウォーカーに課せられた役割も、ますます重要度を増している。

ブロードウェイ・ミュージカル『ピピン』
脚本 ロジャー・O・ハーソン
作詞・作曲 スティーヴン・シュワルツ
演出 ダイアン・パウルス
振付 チェット・ウォーカー
サーカス・クリエーション ジプシー・スナイダー
出演 城田優、Crystal Kay、今井清隆、霧矢大夢、宮澤エマ、岡田亮輔、中尾ミエ(Wキャスト)、前田美波里(Wキャスト) ほか

会場・会期:
東京/東急シアターオーブ 2019年6月10日(月)~ 6月30日(日)
名古屋/愛知芸術劇場 2019年7月6日(土)、7月7日(日)
大阪/オリックス劇場 2019年7月12日(金)~ 7月15日(月・祝)
静岡/静岡市清水文化会館マリナート 2019年7月20日(土)、7月21日(日)
※ 開演時間、席種別料金など詳細は公式サイトへ

問い合わせ
キョードー東京
TEL. 0570-550-799
公式サイト

 

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